「高校生に応急処置をしていたのは大久間ではなくもっと若い男性だったという証言を得た。男性はすぐに去ってしまったと。その高校生にも話を聞いたが、ぶつかった女に『大久間が助けたことにして。車で送ってあげたんだからいいでしょ』と言われたそうだ」
正臣は高校生が女にもらったという名刺の写真を表示したスマホを瑠花と蓮の前に差し出す。
「ジャーナリスト 松岡紗友里……」
「虎二郎の姉だ。あと父親の秘書をしている龍一郎という兄がいる」
正臣は写真をスクロールし、次の画面に。
松岡紗友里が書いた記事の下についているプロフィール部分の写真を拡大し、蓮に見せた。
「この女だ。高校生とぶつかったのに謝りもせず、大きなカメラを道路に向かってかまえていた女」
「蓮さんが助けたのに、大久間は自分の好感度を上げるために利用したってことですよね?」
瑠花は正臣に確認すると、正臣も凛もそうだと頷く。
「紗友里は蓮を、虎二郎は瑠花さんを、それぞれ情報屋に探させているようだ」
「俺を?」
「金を渡して、大久間が助けたことにしてくれって言うつもりだろうな」
呆れた口調でスマホを引っ込める正臣に、蓮の眉間のシワはさらに濃くなった。
「俺は選挙違反取締本部側から大久間を追う」
「私は弁護士として虎二郎を引っ張り出し、大久間までたどり着いてみせるわ」
警視の正臣、弁護士の凛。
だったら私ができることは。
「私は記事を書きます。高校生の件で大久間が嘘をついていること、大久間の息子が犯罪者だということを世間に公表します」
「瑠花!」
止めようとする蓮に瑠花は微笑みかける。
「会社はクビになっているから迷惑はかからないし、このまま一生、あの男のせいで外出できないのもイヤ。蓮さんと遊びに行きたい。買い物も映画も気軽に行きたい」
瑠花は正臣と凛にやらせてくださいと頼む。
「そもそも私が弁護士として動くには瑠花ちゃんの協力が必要なんだけれどね」
被害者がいないと訴えることができないという凛に瑠花は頷いた。
記事を書いたら正臣が知人に公表を頼んでくれることになり、記者名は伏せることに。
裁判では本名が出てしまうが、ギリギリまで出さないと凛は約束してくれた。
「蓮、自分だけ役に立たないだなんて思っていないでしょうね?」
「あの顔は思っているだろう」
凛と正臣の指摘に気まずそうな顔をする蓮の手を瑠花はそっと握る。
「蓮さんがいないと頑張れない」
「……瑠花、それ反則」
すべての悩みが吹っ飛ばされそうだと蓮は困った顔をする。
「蓮には別で調べてほしいことがある」
正臣に消防でなくては調べられないと言われた蓮は、なんのことかわからず首を傾げた。
「女性たちが被害にあった場所で火事が起きた時期、理由をできるだけ詳しく調べてほしい」
「被害場所?」
蓮は日時と場所が書かれたリストを手に取り、眺める。
公園、河川敷、駅裏と場所はバラバラ、時期も三年前から一年前までだ。
「火事のせいで彼がやったという証拠がないの。防犯カメラの映像も全部消されていてね」
「消防ならではの視点で事件を追ってほしい」
凜と正臣から頼まれた蓮は「わかった」と頷きながら資料をテーブルに戻した。
「じゃあ、ケーキも食べ終わったし、帰るわ」
片づけよろしくと凜は手ぶらで去っていく。
凜の鞄を代わりに持った正臣も片手を軽くあげて部屋へと戻っていった。
正臣は高校生が女にもらったという名刺の写真を表示したスマホを瑠花と蓮の前に差し出す。
「ジャーナリスト 松岡紗友里……」
「虎二郎の姉だ。あと父親の秘書をしている龍一郎という兄がいる」
正臣は写真をスクロールし、次の画面に。
松岡紗友里が書いた記事の下についているプロフィール部分の写真を拡大し、蓮に見せた。
「この女だ。高校生とぶつかったのに謝りもせず、大きなカメラを道路に向かってかまえていた女」
「蓮さんが助けたのに、大久間は自分の好感度を上げるために利用したってことですよね?」
瑠花は正臣に確認すると、正臣も凛もそうだと頷く。
「紗友里は蓮を、虎二郎は瑠花さんを、それぞれ情報屋に探させているようだ」
「俺を?」
「金を渡して、大久間が助けたことにしてくれって言うつもりだろうな」
呆れた口調でスマホを引っ込める正臣に、蓮の眉間のシワはさらに濃くなった。
「俺は選挙違反取締本部側から大久間を追う」
「私は弁護士として虎二郎を引っ張り出し、大久間までたどり着いてみせるわ」
警視の正臣、弁護士の凛。
だったら私ができることは。
「私は記事を書きます。高校生の件で大久間が嘘をついていること、大久間の息子が犯罪者だということを世間に公表します」
「瑠花!」
止めようとする蓮に瑠花は微笑みかける。
「会社はクビになっているから迷惑はかからないし、このまま一生、あの男のせいで外出できないのもイヤ。蓮さんと遊びに行きたい。買い物も映画も気軽に行きたい」
瑠花は正臣と凛にやらせてくださいと頼む。
「そもそも私が弁護士として動くには瑠花ちゃんの協力が必要なんだけれどね」
被害者がいないと訴えることができないという凛に瑠花は頷いた。
記事を書いたら正臣が知人に公表を頼んでくれることになり、記者名は伏せることに。
裁判では本名が出てしまうが、ギリギリまで出さないと凛は約束してくれた。
「蓮、自分だけ役に立たないだなんて思っていないでしょうね?」
「あの顔は思っているだろう」
凛と正臣の指摘に気まずそうな顔をする蓮の手を瑠花はそっと握る。
「蓮さんがいないと頑張れない」
「……瑠花、それ反則」
すべての悩みが吹っ飛ばされそうだと蓮は困った顔をする。
「蓮には別で調べてほしいことがある」
正臣に消防でなくては調べられないと言われた蓮は、なんのことかわからず首を傾げた。
「女性たちが被害にあった場所で火事が起きた時期、理由をできるだけ詳しく調べてほしい」
「被害場所?」
蓮は日時と場所が書かれたリストを手に取り、眺める。
公園、河川敷、駅裏と場所はバラバラ、時期も三年前から一年前までだ。
「火事のせいで彼がやったという証拠がないの。防犯カメラの映像も全部消されていてね」
「消防ならではの視点で事件を追ってほしい」
凜と正臣から頼まれた蓮は「わかった」と頷きながら資料をテーブルに戻した。
「じゃあ、ケーキも食べ終わったし、帰るわ」
片づけよろしくと凜は手ぶらで去っていく。
凜の鞄を代わりに持った正臣も片手を軽くあげて部屋へと戻っていった。



