「いっただきまーす」
凛は大きな口にモンブランを運ぶ。
美人が食べるとそのモンブランがむちゃくちゃ美味しそうに見えるのは、ただの食いしん坊だろうか。
瑠花も目の前のチョコレートケーキにフォークを入れ、パクッと口に入れた。
ほろ苦いチョコレートケーキは濃厚で、真ん中のオレンジが合わさるとすごくおいしい。
「瑠花はチョコレートケーキが好きなのか?」
「……こ、子供っぽいかな」
「覚えておく」
その笑顔は反則でしょう?
よく考えれば隣の蓮はもちろんイケメン。
そして正面の凛は美人。正臣も顔面偏差値が高い。
なんで私だけ平凡!
「あ、そうそう。瑠花ちゃん。預かっていたアレ、会社にちゃんと持って行ったから」
「ありがとうございます」
退職届や従業員証だ。
これで本当に退職が確定してしまった。
なんだかあっけない。
当然のように正臣の抹茶のケーキを奪い、凛は2つ目のケーキを食べ始める。
「やっぱりここのケーキおいしいわぁ」
正臣のケーキもしっかり食べつくした凛は、ようやく鞄から書類を出した。
「あの暴漢犯だけれど、実は以前、被害女性が裁判を起こそうとしたことがあったの」
別の弁護士事務所に依頼があったが、結局訴えることはできなかったと凛は話してくれた。
「彼女もね、瑠花ちゃんと同じで被害届を出したの。だけれど、警察はあっさりと釈放して前科もつかなかった」
凛がチラッと正臣を見ると、正臣は俺に言うなとでも言いたそうに片方の眉を上げる。
凛が見せてくれた書類は、担当弁護士が被害女性に連絡し、同じように苦しんでいる人がいるならと許可をもらってくれた当時の資料だそうだ。
「被害にあったのは一年くらい前なのだけれど、担当弁護士は他の被害女性たちにも連絡してね、複数の証言を集めたけれど、結局裁判には持ち込めなかったと言っていたわ」
「こんなに証言があるのにどうして……?」
証言は裁判を起こそうとした人を含めて五人分。
日時、場所、状況が詳しく書かれている。
「……松岡虎二郎の母方の姓は、大久間だったのよ」
凛は眉間にシワを寄せながら、膝の上で拳をグッと握る。
その手を正臣はそっと握りしめた。
「私は松岡虎二郎を裁判所に引っ張り出したいわ。そして事件をもみ消すあいつも許したくない」
あいつとはきっと松岡虎二郎の父親、大久間敏史郎のことだろう。
凛と蓮の両親が亡くなるきっかけになった男。
隣に座っている蓮が心配になった瑠花が顔を向けると、今まで見たこともないような怖い表情で蓮は拳を握っていた。
凛は大きな口にモンブランを運ぶ。
美人が食べるとそのモンブランがむちゃくちゃ美味しそうに見えるのは、ただの食いしん坊だろうか。
瑠花も目の前のチョコレートケーキにフォークを入れ、パクッと口に入れた。
ほろ苦いチョコレートケーキは濃厚で、真ん中のオレンジが合わさるとすごくおいしい。
「瑠花はチョコレートケーキが好きなのか?」
「……こ、子供っぽいかな」
「覚えておく」
その笑顔は反則でしょう?
よく考えれば隣の蓮はもちろんイケメン。
そして正面の凛は美人。正臣も顔面偏差値が高い。
なんで私だけ平凡!
「あ、そうそう。瑠花ちゃん。預かっていたアレ、会社にちゃんと持って行ったから」
「ありがとうございます」
退職届や従業員証だ。
これで本当に退職が確定してしまった。
なんだかあっけない。
当然のように正臣の抹茶のケーキを奪い、凛は2つ目のケーキを食べ始める。
「やっぱりここのケーキおいしいわぁ」
正臣のケーキもしっかり食べつくした凛は、ようやく鞄から書類を出した。
「あの暴漢犯だけれど、実は以前、被害女性が裁判を起こそうとしたことがあったの」
別の弁護士事務所に依頼があったが、結局訴えることはできなかったと凛は話してくれた。
「彼女もね、瑠花ちゃんと同じで被害届を出したの。だけれど、警察はあっさりと釈放して前科もつかなかった」
凛がチラッと正臣を見ると、正臣は俺に言うなとでも言いたそうに片方の眉を上げる。
凛が見せてくれた書類は、担当弁護士が被害女性に連絡し、同じように苦しんでいる人がいるならと許可をもらってくれた当時の資料だそうだ。
「被害にあったのは一年くらい前なのだけれど、担当弁護士は他の被害女性たちにも連絡してね、複数の証言を集めたけれど、結局裁判には持ち込めなかったと言っていたわ」
「こんなに証言があるのにどうして……?」
証言は裁判を起こそうとした人を含めて五人分。
日時、場所、状況が詳しく書かれている。
「……松岡虎二郎の母方の姓は、大久間だったのよ」
凛は眉間にシワを寄せながら、膝の上で拳をグッと握る。
その手を正臣はそっと握りしめた。
「私は松岡虎二郎を裁判所に引っ張り出したいわ。そして事件をもみ消すあいつも許したくない」
あいつとはきっと松岡虎二郎の父親、大久間敏史郎のことだろう。
凛と蓮の両親が亡くなるきっかけになった男。
隣に座っている蓮が心配になった瑠花が顔を向けると、今まで見たこともないような怖い表情で蓮は拳を握っていた。



