スパダリ救急救命士は、ストーカー被害にあった雑誌記者を溺愛して離さない~必ず君を助けるから。一生守るから俺の隣にいろ~

「私は高校生、蓮は中学生だったわ」
 両親に憧れてもともと弁護士を目指していた凛はそのまま予定通りに大学に。

「蓮は救急救命士になると言い出したの。お金や権力に釣られない救命士になって一人でも多くの人を救うって」
「……お金や権力?」
「重症の両親ではなく、軽傷の大久間を先に病院へ連れて行ったからね」
「……そんな……」
 運転手は逮捕されたが、大久間は罪には問われなかった。

 選挙の時期はイヤでもあいつの名前を聞くので、蓮の様子がおかしくないかと瑠花は聞かれた。
 そう言われれば、選挙の番組やニュースはすぐ違う番組に変えていた気がする。
 それにいつもよりも密着が多かったり、休みの日も外には出たがらずこの部屋にいた。

「あっ! 私カーテンのサイズを……」
 あの時、蓮はメジャーを借りに凛のところへ。
 そしてなぜかサイズが書かれたメモを持って帰ってきた。

「私、酷いことを……」
「知らなかったのだから仕方ないわ」
 伝えていなくてごめんねと言われた瑠花はブンブンと首を横に振った。

 凛は少し冷めたお茶をゆっくりと口に含む。
 思わず「はぁ~」と声が出てしまった凛は「おばさんっぽかったわね」と笑った。

「私ね、瑠花ちゃんが仕事を辞めないといけないと聞いた時、半分は不当解雇だと怒りが込み上げたけれど、半分は蓮の側にいてくれるって喜んでしまったの」
 ごめんねと謝りながら凛はお茶を飲み干す。

「蓮をよろしくね」
 カーテンを閉めた凛は瑠花の退職届が入った封筒と鞄を持つと手をヒラヒラさせながら玄関を出て行った。

「……ここが家だったって聞いていたけれど」
 まさか両親が亡くなった交差点が見えるだなんて想像もしていなかった。

 それなのに私のためにここに……。
 早く蓮に会いたい。
 瑠花はスマホを手に取ると『お仕事がんばってね』とメッセージを打った。
 すぐには既読にならないメッセージ。
 瑠花は「よし!」と気合を入れると、キッチンに向かい明日の朝食の準備をすることに決めた。
 

 翌朝、蓮が帰ってくる前にシーツと布団カバーを交換し、ひととおり掃除機もかけた。
 お風呂を沸かして、朝食の煮物も温め直していると蓮が帰ってくる。

「おかえりなさい」
「ただいま、瑠花」
 やっぱり瑠花がいるといいと言いながらギュッと抱きしめてくる蓮に、今日は土曜日だよと瑠花は笑った。