翌日、会社から弁護士事務所に荷物が届いたと、小さな段ボール一個を抱えて凜は部屋に来てくれた。
同封されていた退職届にサインをし、返信用封筒に入れる。
これで終わり。
あっけなく終わってしまった退職手続きに瑠花は苦笑する。
「瑠花ちゃん、ごめんね」
「凛さんが謝ることなんて何もないですよ。ご迷惑をかけてすみません」
従業員証、ロッカーの鍵、指定のものを封筒に入れて凛に預けると、月曜に届けると凛は約束してくれた。
「凛さん、コーヒーにお砂糖とミルクは……」
「あ、私はコーヒー飲まないの」
「えっ? あとはお茶くらいしか……」
「すぐ帰るからいらないわよ」
くすくす笑いながら凛はぐるっと部屋を見渡す。
「だいぶ部屋が明るくなったわね」
小物が増えた部屋を見ながらそうつぶやいた凛の顔は少し寂しそうだった。
「……ねぇ、瑠花ちゃん。蓮と結婚してくれる?」
「ふぇっ!? な、な、なんで凛さん知っているんですか?」
「えっ?」
「あれ?」
蓮から聞いたのだと思い込んでいた瑠花は真っ赤な顔に。
「もうプロポーズしたの? あの子!」
蓮さんから聞いたんじゃなかったんだ!
なんだか自滅した気分になった瑠花は両手をモジモジと触りながら凛に話すかどうか迷ってしまった。
「やっぱりお茶淹れてくれる? 飲みたくなったわ」
瑠花がお茶を淹れている間に、凜は開かずのカーテンをシャッと開く。
「あっ」
「蓮が嫌がる……でしょう?」
「あ、はい」
「私たちの両親が事故死したの、あの交差点なのよ」
凛は窓から見下ろせる交差点を指差した。
凛の部屋からは見えないけれど、この部屋からは見えてしまう。
だから蓮はココに住むのを嫌がったのだと凛は教えてくれた。
「……だからカーテンは開けないでって……」
蓮はこの場所には戻りたくなかったのに、私のために戻ってくれたんだ。
急いで引っ越さなくてはいけなくて探す時間もなかったから。
私の安全を優先するために……。
「もうひとつ教えておくわね。今、選挙しているでしょう?」
「あ、はい。衆議院の」
「候補者の大久間敏史郎っているでしょ?」
政治は詳しくないけれど、最近会社の周りを選挙カーで走っている人だ。
テレビにも何度か出ている気がする。
「あの男が乗った車と事故を起こしたのよ。あちらが完全に信号無視でね」
両親は重症、大久間は軽傷だったのに救急車に乗ったのは大久間だったと。
あとから来た救急車に両親は乗ったが手遅れで、あと五分早く応急処置を受けていたら助かったかもしれないと、当時父と一緒に働いていた弁護士に説明されたと凛は教えてくれた。
同封されていた退職届にサインをし、返信用封筒に入れる。
これで終わり。
あっけなく終わってしまった退職手続きに瑠花は苦笑する。
「瑠花ちゃん、ごめんね」
「凛さんが謝ることなんて何もないですよ。ご迷惑をかけてすみません」
従業員証、ロッカーの鍵、指定のものを封筒に入れて凛に預けると、月曜に届けると凛は約束してくれた。
「凛さん、コーヒーにお砂糖とミルクは……」
「あ、私はコーヒー飲まないの」
「えっ? あとはお茶くらいしか……」
「すぐ帰るからいらないわよ」
くすくす笑いながら凛はぐるっと部屋を見渡す。
「だいぶ部屋が明るくなったわね」
小物が増えた部屋を見ながらそうつぶやいた凛の顔は少し寂しそうだった。
「……ねぇ、瑠花ちゃん。蓮と結婚してくれる?」
「ふぇっ!? な、な、なんで凛さん知っているんですか?」
「えっ?」
「あれ?」
蓮から聞いたのだと思い込んでいた瑠花は真っ赤な顔に。
「もうプロポーズしたの? あの子!」
蓮さんから聞いたんじゃなかったんだ!
なんだか自滅した気分になった瑠花は両手をモジモジと触りながら凛に話すかどうか迷ってしまった。
「やっぱりお茶淹れてくれる? 飲みたくなったわ」
瑠花がお茶を淹れている間に、凜は開かずのカーテンをシャッと開く。
「あっ」
「蓮が嫌がる……でしょう?」
「あ、はい」
「私たちの両親が事故死したの、あの交差点なのよ」
凛は窓から見下ろせる交差点を指差した。
凛の部屋からは見えないけれど、この部屋からは見えてしまう。
だから蓮はココに住むのを嫌がったのだと凛は教えてくれた。
「……だからカーテンは開けないでって……」
蓮はこの場所には戻りたくなかったのに、私のために戻ってくれたんだ。
急いで引っ越さなくてはいけなくて探す時間もなかったから。
私の安全を優先するために……。
「もうひとつ教えておくわね。今、選挙しているでしょう?」
「あ、はい。衆議院の」
「候補者の大久間敏史郎っているでしょ?」
政治は詳しくないけれど、最近会社の周りを選挙カーで走っている人だ。
テレビにも何度か出ている気がする。
「あの男が乗った車と事故を起こしたのよ。あちらが完全に信号無視でね」
両親は重症、大久間は軽傷だったのに救急車に乗ったのは大久間だったと。
あとから来た救急車に両親は乗ったが手遅れで、あと五分早く応急処置を受けていたら助かったかもしれないと、当時父と一緒に働いていた弁護士に説明されたと凛は教えてくれた。



