買い物から戻った蓮に「会社にもう来なくていい」と言われたことを瑠花は泣きながら話した。
すぐに凛に連絡し、弁護士として会社に連絡を取ってもらったが決定は覆らなかった。
解雇予告手当三ヶ月分を六ヶ月分に増額、残っていた有給休暇を給与計算して支払う、転職時に聞かれた場合は円満退職だったと答えるという約束だけで精いっぱいだと凛に電話で謝罪された。
会社の前をうろついていた自称探偵についても調べてくれるそうだ。
急にぽっかりと胸に穴が開いてしまった。
仕事人間だったわけではないけれど、こんなに急にクビになるなんて考えたこともなかった。
「はい。熱いから気を付けて」
ソファーでぼんやりしていた瑠花に蓮は甘いカフェオレを差し出してくれた。
温かいマグカップと湯気になぜかホッとする。
ミルクと砂糖多めの甘いカフェオレがすごくうれしかった。
「おいしい」
瑠花がはにかむように笑うと、蓮はそっと瑠花からマグカップを抜き取りテーブルに置いた。
「瑠花、結婚しよう」
「ふえっ? な、なんでそんな話に?」
「瑠花は寿退社。不規則勤務の俺のために仕事は続けたかったけれど退職してくれた」
どう? と蓮が瑠花の手を握りながら顔を覗き込む。
あぁ、心配してくれたんだ。
円満退職だと言っても、きっとこんな変な時期に退職するなんておかしいって思われるだろう。
結婚の時期と一致していれば疑われることもなく、再就職する時によくあることだと思ってもらえる。
でも、そんな理由で蓮との結婚を決めたくない。
「今月中に瑠花の両親とおばあさんに挨拶して籍だけ入れて、結婚式は一年後に……」
こんなに考えてくれているのに、どうして素直に「はい」って言えないんだろう?
蓮のことは好きだ。
でもこれは違う。
違う気がする。
「瑠花は俺のこと、好き?」
困った顔で頬む蓮に、瑠花は迷わずうんうんと頷いた。
「……でも、結婚したくない?」
蓮のことは好きだ。
でも蓮と付き合い始めてたったの二ヶ月。
おばあちゃんが倒れた時から数えてもまだ五ヶ月も経っていない。
会社を解雇されたことを理由に結婚を決めるなんてしたくない。
蓮のことが好きだからこそ、いい加減に返事をしたくないなんて贅沢でわがままな悩みだ。
返事ができずに俯きながら下唇を噛むと、蓮の手が瑠花の唇にそっと触れた。
「……ごめん、ちょっと焦りすぎた」
三年も片想いだったからと蓮は瑠花の唇を指でなぞる。
優しくて、たくましくて強くて、料理もできて、見た目ももちろんカッコいい。
いつでも気遣ってくれて、三年も思い続けてくれて、最高のスパダリ。
だからこそ、私は自信がない。
今はまだ付き合い始めで何でもよく見えて、私の嫌なところをきっと蓮は気づいていない。
でも結婚して、やっぱり違ったなんて思われたら申し訳ない。
私は結婚したけれどダメでしたって再就職したときに都合よく利用できるけれど、蓮は傷を負うだけ。
「……もうちょっとだけ」
今はまだ返事をする勇気がない。
「うん?」
「あと少しだけ、恋人でいさせて」
不安そうな顔を上げた瑠花に答える代わりに、蓮は優しく甘いキスをしてくれた。
すぐに凛に連絡し、弁護士として会社に連絡を取ってもらったが決定は覆らなかった。
解雇予告手当三ヶ月分を六ヶ月分に増額、残っていた有給休暇を給与計算して支払う、転職時に聞かれた場合は円満退職だったと答えるという約束だけで精いっぱいだと凛に電話で謝罪された。
会社の前をうろついていた自称探偵についても調べてくれるそうだ。
急にぽっかりと胸に穴が開いてしまった。
仕事人間だったわけではないけれど、こんなに急にクビになるなんて考えたこともなかった。
「はい。熱いから気を付けて」
ソファーでぼんやりしていた瑠花に蓮は甘いカフェオレを差し出してくれた。
温かいマグカップと湯気になぜかホッとする。
ミルクと砂糖多めの甘いカフェオレがすごくうれしかった。
「おいしい」
瑠花がはにかむように笑うと、蓮はそっと瑠花からマグカップを抜き取りテーブルに置いた。
「瑠花、結婚しよう」
「ふえっ? な、なんでそんな話に?」
「瑠花は寿退社。不規則勤務の俺のために仕事は続けたかったけれど退職してくれた」
どう? と蓮が瑠花の手を握りながら顔を覗き込む。
あぁ、心配してくれたんだ。
円満退職だと言っても、きっとこんな変な時期に退職するなんておかしいって思われるだろう。
結婚の時期と一致していれば疑われることもなく、再就職する時によくあることだと思ってもらえる。
でも、そんな理由で蓮との結婚を決めたくない。
「今月中に瑠花の両親とおばあさんに挨拶して籍だけ入れて、結婚式は一年後に……」
こんなに考えてくれているのに、どうして素直に「はい」って言えないんだろう?
蓮のことは好きだ。
でもこれは違う。
違う気がする。
「瑠花は俺のこと、好き?」
困った顔で頬む蓮に、瑠花は迷わずうんうんと頷いた。
「……でも、結婚したくない?」
蓮のことは好きだ。
でも蓮と付き合い始めてたったの二ヶ月。
おばあちゃんが倒れた時から数えてもまだ五ヶ月も経っていない。
会社を解雇されたことを理由に結婚を決めるなんてしたくない。
蓮のことが好きだからこそ、いい加減に返事をしたくないなんて贅沢でわがままな悩みだ。
返事ができずに俯きながら下唇を噛むと、蓮の手が瑠花の唇にそっと触れた。
「……ごめん、ちょっと焦りすぎた」
三年も片想いだったからと蓮は瑠花の唇を指でなぞる。
優しくて、たくましくて強くて、料理もできて、見た目ももちろんカッコいい。
いつでも気遣ってくれて、三年も思い続けてくれて、最高のスパダリ。
だからこそ、私は自信がない。
今はまだ付き合い始めで何でもよく見えて、私の嫌なところをきっと蓮は気づいていない。
でも結婚して、やっぱり違ったなんて思われたら申し訳ない。
私は結婚したけれどダメでしたって再就職したときに都合よく利用できるけれど、蓮は傷を負うだけ。
「……もうちょっとだけ」
今はまだ返事をする勇気がない。
「うん?」
「あと少しだけ、恋人でいさせて」
不安そうな顔を上げた瑠花に答える代わりに、蓮は優しく甘いキスをしてくれた。



