日本一のヤンキーは、私のことを守ると誓う

「安心しろ、俺は何もしない」


立ち止まった隆火さんは目を細めた。


「さっきは怖い思いをしただろう」


私は無言でうなずく。


「なんでお前に金持ちがどうこう言ってんのかは知らんが、お前にやったことはひどい。同じ男として恥ずかしい。こんなことになってすまない」


「いえ……私は、解決したので大丈夫です。それに隆火さんには何もされてないので。むしろ解決につなげてくれましたし……」


「俺がか?あれは白組の一年たちがだいぶ頑張ったと思うんだが……むしろ俺は風戯がああなるのを止められなかった。あいつの家は貧乏で、高校にも行けないかもしれなかった…… 受験の時期も、家族に助けてもらうどころか家族を助けなければならないってな……どうも金のことになると我を忘れる……いや、そんな話されても困るか。すまない」



隆火さんは軽木を憐れむように俯いていたけど、自分の話していたことを思い出すと、顔を逸らして謝った。


金持ち云々は完全に誤解だ。誤解でこんなことされたらやってられないけど、しかしそういう事情があるのだと思うと、受験でお母さんが送り迎えをしたり派手な靴を履くという、私にとっては珍しくないことが、彼にはとっては見ていて憎たらしくなったのだろう。


「いえ、気にしないでください。……そっか、そういう理由で……」


訳もわからず絡まれていた時は事の原因がわからなくてすごく怖かったけど、断片的にでも原因がわかり、得体の知れない恐怖から解放されて少し楽になった。


こうして大きなトラブルも解決し、準備期間を終えたのだった。