日本一のヤンキーは、私のことを守ると誓う

白組が先に来るものだと思っていたら……スタート地点で待機していた私は、内側を赤組の人に譲り、外側で白組を待つ。


白組はまだ来ない、軽木たちを避けるため一旦スタート地点から離れた方がいいか。
そう考えたものの時すでに遅し、軽木が肘で私を突き飛ばした。


バトンを渡し終えた軽木は足の紐を解いて私のところに戻ってくる。


軽木が何か仕掛けてくるけど、もうすぐ白組が来るからここを離れられない!


「赤組に抜かされてしまったなぁ。ひ弱なお嬢さんが巻き返せるか?」


軽木が私を煽り、顔を覗き込む。
ハンデがなくなった。女子の中でも足の遅い私がリードを失っては勝ち目は薄い。


どうしよう。私が招いた事態だ。なんとか巻き返さないと……


目の前の絶望的な事態で頭がいっぱいになって


「藤原!バトン!」


すぐ後ろに白組が来ていたことに気付かなかった。


「ご、ごめんなさい!」


引き抜くようにバトンを受け取り慌てて鉄骨渡りに向かう。


「バトンパスも出来ねぇのかよ。ダサっ」


後ろから軽木のあざ笑う声が聞こえた。


鉄骨渡りでも足を速めようとして動かす。でもそうしている間にも赤組は渡り終える。


リードはさらに開いていて、私が赤組を抜き返すことは不可能に見えた。


追いつこうと走るけど、体が重くて、風が強く吹き当たって、前に進んでいかず、距離が全く縮まらない。


遅いぞ〜それで走ってんのか!

ちょっと強く当たられた程度で潰れるのかよ。

走っている間も軽木のヤジがあって、精神をキリキリと絞られ、息が詰まって体を動かすのが苦しくなる。


最後の方はフラフラになり、バトンを渡したかも覚えていないほど意識が薄れた。


その後白組は巻き返すことなく大敗した。