日本一のヤンキーは、私のことを守ると誓う

授業と授業の間の休み時間のことだ。
廊下を歩いていた私は、すれ違う人を避けきれず、肩をぶつけてしまう。


「おいてめぇ、なにぶつかってんだよ」


「す、すみません!」


私は頭を下げて謝った。


ここ(この学校)の人はぶつかった後わざわざ歩みを止めて何か言ってくれる。


「フラフラしてんじゃねーぞ!」


そう言って相手はイライラと体を揺らしながら去って行く。


午前中そんなことがあり、放課後私が帰りの準備をしていると、自分の席に立つ私のところに同級生たちが近寄ってきた。


その中には今日ぶつかった男子もいた。
彼らは横や後ろを塞ぐように立っている。


「今から校舎裏来い」

今日ぶつかった男子は斜め後ろに立ち、振り向く私をあごで呼び寄せる。


前後左右を固められてずるずると校舎裏に連れて行かれ、進行していた動きが止まると、周囲を囲う同級生たちは散開する。


それで周りが見えるようになると、そこにはクラスや学年ごちゃ混ぜでヤンキーが集まっていた。
私のすぐ目の前、中央には、私たち一年の間でも有名な二年のヤンキー、 久辺 隆火(くべ りゅうか)さんがいる。


角ばった木製の椅子にどかっと腰かけ、上位のヤンキーらしい威圧的かつ険しい表情で眺めている。安っぽく染めた髪ではない、黒々とした髪をヘアピンでとめ、このヤンキー高校を象徴する学ランを前開きで着ている。


隆火さんは二年の中でも有数の腕利きだ。私たち一年じゃ喧嘩で敵うものなどいないだろう。


私は見せしめに連れてこられたのだ。私は抵抗するつもりもなく、がくりと頭を下げた。