「美華ちゃん?」
彼の姿にぼーっと見惚れてしてしまい、こてんと首を傾げられた。
「あっ……ご、ごめんね。私、ぼーっとしちゃって。バスの中、人が多くて暑かったから……かな。あっ、そうだ。さっき、病院の中庭で屋台してるのが見えて。ここも、まるで」
「美華ちゃん」
お祭りみたいだね、と矢継ぎ早に言おうとしたが彼に止められてしまった。
私が、本当のことを隠す為に口数が多くなるのがバレてるのかも。
「えっと……」
「そんなとこで立ってないで、こっちにおいでよ」
ベッドの脇にあるイスをトントンと叩く彼。
そういえば、まだ病室へ一歩入っただけだった。
彼の言った通りに椅子に腰掛けると、彼は深々と頭を下げた。
「えっ……ど、どうしたの……?」
「ごめん! 夏祭りに行こうって言っておいて、結局ここで……あー。僕、ほんと何やってんだろ……」
珍しくネガティブなことを言う樹くん。
「それに、美華ちゃんに気を使わせるし……マジでカッコ悪い……」
大きくため息を吐いて落ち込む彼。
どうやら、私が彼に見惚れた恥ずかしさを隠す為に口数が多くなった事に勘付いたわけではないようで安心した。
そして、ちょっとだけ寂しい。


