「ありがとう」

「それと沙也加は家の都合で退社することになった。元々、アメリカもご両親の承諾なしで俺をおいかけてきたんだ。父が甘くてね。許してしまったが、あちらのご両親から色々言われて反省したようだ」

「そう。彼女は大丈夫？あなたのことが本当に長い間好きだったんでしょう？」

「好きというより、もはや勘違いと執着だ。あいつこそストーカーなんだ。ここだけの話だが、昔、沙也加は関係を持った男性とトラブルになったことがある。その時に両親から逃げて生前の母を頼ってきた。母は父に内緒で助けてしまい、僕も巻き込まれた。あれからさらに沙也加の勘違いが強まったんだ」

「そうだったのね。でもあなたが冷たく突き放さなかったのは理由があるんでしょう？」

「まあ、僕も恥ずかしながら家のことで色々あって、母の死後、誰も信じられない時期があった。そんな時、沙也加が無条件に僕を褒めて勇気づけてくれたので救われた時期もある」

「そう、それが理由だったのね……交際はしなかったけど、色々あった？」

「ない。沙也加とは本当に何もない。それから沙也加が昔ここに泊まったと意味ありげに話していたのは、母がかくまった時だけだ」

「ふーん。でも、もし何かあったとしても、もういいの……」

「莉愛、頼むから僕の名誉のためにもその誤解だけはやめてほしい」

「わかった。でも、過去のことはもういい。だって、これからの祐樹さんはずうっと私のものなんでしょ？」

「もちろん。これからの僕はずっと君のものだ」

「私も沙也加さん並みのストーカーになるかもしれないわよ？他の女性に何を言われてもあなたを渡さないから」

　祐樹は莉愛を抱きしめた。

「嬉しいよ。君にはもう少し僕に執着してほしいくらいだった。そうだ莉愛、兄貴と和解したんだ。どうして莉愛を連れてこないと怒られた」

「え？本当に？それはよかったわね」

「ああ、たくさん兄のことを誤解していた。莉愛のコンペも妹として応援しているから伝えてくれと言われたよ」

「本当に？嬉しいー！」

　莉愛が嬉しそうに叫んだ。