「うん……」


なんでわかったんだろ、顔に出てたとか?



私は自分の頬をつねる。



「お兄ね、今帰ってきてるの犬堂家に」



凛音ちゃんは何かを決断するように顔を顰めた後私の方を向く。



今犬堂家にいるの?四季さんが?って事は今までずっと犬堂家に行っていたって事?



……よかったっ 



何か悪い事でもしているのかと思っていたから犬堂家にいるとわかり心底ほっとした。



「おいっ言っていいのかよ」



慌てている奏太を見るに四季さんが犬堂家にいる事は知っていたのだろう。



「こんな美央ちゃん見てられないよっ」



やっぱり顔に出ていたのか心配そうにそう言う凛音ちゃんは四季さんに似てとても優しい。



それに私が四季さんの事好きって知っているような口振り。



「お兄ね、許嫁がいるの。それで今日入籍した……」



「えっ……」



許嫁?入籍?どういう事?



私は訳がわからずただ立ち尽くす事しかできない。



「私の父はコミュニティっていう会社の社長で取引先のご令嬢とお兄を婚約させたの」



コミュニティってあの有名企業?じゃあ四季さんは社長の息子って事?勿論凛音ちゃんも。



あぁそうか、私には釣り合うはずもなかった人って事ね。



私はただの一般市民だから気持ちを伝える事さえできないっ



「ありがとう、教えてくれて……」



それだけ言うと私は二人に背を向け歩き出す。



「待てよ美央っ」



後ろから奏太の声が聞こえたが今は止まることはできなかった。