苦しそうに歪んだ迅の横顔を眺めていたら、彼の罪悪感を少しでも軽くしてあげたくて、自分の愚考も話すことを決めた。




「…今から、ちょっとだけ、酷いこと言ってもいい?」





不意を突かれたように、迅は顔を上げる。






「…酷いこと?」






彼は戸惑うように目を丸くしている。



でも、そのあとゆっくり頷いてくれた。





「私、迅のこと助けてたわけじゃない。…自分を必要としてくれる人に餓えてて、迅のことを利用した。」




彼がどんな顔してるのか見るのが怖かった。




「誰かに求められてるって実感がほしくて、迅が苦しんでる状況を、利用した。」




声が震えている。





だけど迅が耐えてきた罪悪感に比べたら全然大したことない。




……それに、彼の純粋な心を前に、これ以上隠していられなかったから。






「……そっか。」



迅はそれだけを言って沈黙する。




やっぱり私は迅を傷つけたんだ。


でも、これで彼が離れていったとしたら、正直安心する気持ちもあった。


だってこんなに綺麗な彼の瞳に、私を映してはいけない気がしたから。







数秒間の沈黙の後、ふと迅が口を開く。



「…それなら、本望だな。僕は本当に、紗季のことを心から必要としてたから。紗季が気づいてくれてたなら、僕は嬉しい。」


「っ……!!」



私は驚いて顔を上げる。





「それに、紗季が助けてくれたことは変わらないよ。僕は感謝してる。」



迅は、綺麗な瞳で、私を真っ直ぐ見つめた。私はもう、その瞳から目を離さない。



「紗季が何を言っても、紗季が僕を助けてくれたっていう事実に、僕は向き合っていくよ。

…あとは、僕が奪っちゃった紗季の笑顔とも。」





迅は、私にふわりと微笑んで、そう言った。




「…迅?」


迅は軽く伸びをして、私に向き直る。




「これで、お互いの悪行も釣り合った…いや、それでも僕が奪っちゃったもののほうが大き いかな。」




迅は目を伏せて切なげに微笑む。




私はそんな姿を見て、何もせずにはいられず、迅の手を握った。




迅の手は氷のように冷たて、少し震えていた。




「いつも色んなところに連れて行ってくれたのは…私のためだったんだね。

 迅。ありがとう。あと…ごめんね。」




そう言った途端、彼は大きく目を見開いた。




そして、水槽に目を戻しながら、優しく囁く。





「紗季が僕を助けてくれたんだから。今度は僕が紗季を助けないとって思って。

…なんて言っても、僕にはなにもないから。

だからせめて、紗季が楽しく生きられるようにしたかった。」


そう言って、今度は彼が私の手を強く握ってくれた。




暖かくて、切なくて。




そんな彼を、そして私を






























水槽の青が照らした。