「…迅。」
「何?」
彼は視線をこちらに向けずに答える。
水槽の青で彼の顔が染まった。
やっぱり整ってる。
切れ長の二重瞼から覗く瞳は澄んでいて、鼻筋が通っていて、薄い唇に尖った顎。
何処を見ても、美しい。
でも、私を孤立させておいてそんなに綺麗な横顔で私を連れ回すなんて、と穢れた感情が湧き上がってきて、自己嫌悪に陥る。
「……どうして、いつも私を色んなところに連れ回すの?迅は昔から一人で遊ぶのが好きだから、こういうのも一人で楽しめばいいのに。」
「…紗季は今、どんな顔してるのか自分でわかってる?」
迅は、息を細く吐いて、何故か悲しそうに呟いた。
「っ、ぇ?」
突然の質問に驚く。
迅は水槽から目を離して、今度は私の目をまっすぐ見つめた。
「…ずっと傷を残してるけど、必死に耐えてる。僕にはわかる。」
「…どういうこと?」
「…もしかしたら、誰も気づかないかもしれない。紗季は強がりが得意だからね。
でも、残念ながら僕の目は誤魔化せないよ。僕は、紗季のこと、ずっと見てたんだから。」
迅は軽く微笑んだ。
「えっ?見てたって…」



