恋と首輪



〜1年後〜


「…ん、」
目が覚めると、いつ見ても綺麗な蓮の顔が目に入る。

そんな日常にも慣れてきた。

高校を卒業した日に籍を入れ、とんとん拍子で結婚式を挙げた。
私と蓮は同じ大学に通って勉強しながら、蓮が社長をしている会社で働く忙しい日々を過ごしている。
結婚1年目。いわゆる新婚の私たちの朝は、いつも同じ。

「…蓮、起きて」
「…んん、むり」
ぎゅっときつく抱きつかれて呼吸が止まりそうになる。

あーもう、朝弱いのどうにかならないかな。
でも、甘えてくるのは可愛いから、許しちゃうんだけど…。

「もう、遅れちゃうよ、今日会社でしょ?」
「……いまなんじ」
「8時半」
「……余裕。俺社長だからへーき。」

起きれないときのいつもの口癖。
これが、あの大企業の社長だなんて。寝起きの蓮を見ると毎回不思議になる。

「…みゆ、きて」
こっそりベッドから抜け出そうとする私を、引き止める蓮。

私の手をぐっと引っ張って、また子供のように抱きつく。

「なに?私もう大学の準備しなきゃ。」
「…みゆ…すき…」

"ちゅ"
これも実はいつものルーティーン。

最初の頃はこのトラップに引っかかって寝坊する蓮を見逃してたっけ。

「うんうん、私も好き。でも起きて。」
「シたい」
「もう、昨日シたじゃん!てか、そんな元気あったら早くシャワー浴びてきて」
「…ちぇ、」

これぐらい強く言わないと、本当に上手く丸められるから、要注意。

よし、起きた。これで私たちの一日はスタートする。

蓮がシャワー浴びてる間に、ご飯とお弁当を作って、洗濯も済ませる。
ああ、家事がこんなに大変だなんて思わなかった。

蓮は私がしなくてもお手伝いさんを雇えばいいって言ってくれたけど、やっぱり新婚のときぐらいは頑張りたくて断った。

おまけに……
「みゆ〜スーツ選んで〜」

ほんとに5歳児を育ててるようなもんだと思う。
そして無事全部済ませ、家の前で待ってる車に乗り込んだ。