恋と首輪



そこからはあんまり覚えてない。

ステージを降りた後、色んな人にお祝いしてもらったけど、私の頭はまだ上の空で。

主人と結婚するとゆう事実が、あまりにも信じられない。

パーティーがお開きになった後、主人は私の手を引いて、ある場所に向かった。

「…ここ…って、…」
大きな噴水がライトアップされたところ。
前もここで、主人と話したっけ。

「びっくりした?」
いたずらっ子のような笑顔でそう言ってくる主人を見たら

今まで我慢していた涙が溢れ出した。

「……ふぇっ…ゔう……」
私は主人にぎゅっと抱きつく。

「……ぅぅ、びっくりしたあ…、ッ」
「ごめんごめん、喜ばせたかったんだけど逆効果だった?」
「………」
私は主人の胸の中で思いっきり首を横に振る。

「…うれじい…」
「ふは、ならよかった」
主人は、私を抱きしめる手にぎゅっと力を入れる。

「婚約の返事、遅くなってごめん」
「……ッ、」
「これはちゃんと一人前になってから言いたかったから、急に仕事増やしたりして不安にさせた」

そっか。
頑張って仕事するのも、社長になったのも、

…全部私のためだったんだ。

それを思うと、また涙が溢れてくる。

「でも、もう不安にさせたりしない。」
主人は私とゆっくり体を離す。

そして驚いている私に追い討ちをかけるように、
"あるもの"を取り出した。

「……うわ……」
主人の手の上で、ピカピカ光る指輪から目が離せない。

「手出して」
その言葉に、手を出すと、私の左手の薬指にゆっくりと、はめていく。

本当に幸せすぎて死にそうだ。

「似合ってる」
「……ッ、ありがとう」

「あー、やっと面と向かって言える。」

首輪になった最初の頃は、まさかこんな気持ちになるなんて思ってなかったな。

主人のことがこんなにも愛おしくて、大好きで、
狂ってしまいそうになるなんて。

お母さん、私やっぱり、"愛"を

ー信じてみたい。

この人となら。

「みゆ、結婚しよう」