恋と首輪



「みゆ、何その格好」
「え!蓮!?何でここにいるの!?」

女の子の悲鳴と同時に登場した主人は、
私の格好を見るや否や、少し固まった。

やばい、やばい、恥ずかしい…

「何って、俺ここの生徒」
こんな高級スーツ着こなす生徒いないわ!
仕事終わりなのか、真っ黒のスーツに身を纏い、いつも下ろしてる前髪を上げている。

かっこいいけど、いつもより迫力が…

周りの女の子達も顔を赤くして、写真を撮ってる人だっている。
わかる、私も撮りたい。
けど、今はこの修羅場をどうにかせねば…。

「へえ、猫耳メイドカフェね」
「……ッ、」
「似合ってるじゃん、メイドさん」
蓮はにこやかに笑い私のツインテールにした髪を指でくるくる回す。

「こ、これには訳があって…」
「ふーん、どんな訳?俺なんも聞いてないけど」
目が、目が笑ってない。
絶対怒ってる。

こうなるから言いたくなかったのに!!

「こんな可愛い姿俺以外の男に見せてたのって、どんな理由?」
主人は周りの男性客を見て、殺気を出す。
まずい、これはまずい。

私は咄嗟に主人の手を取る。

「ごめん、私が悪かった。全部私のせい。ね?」
最近少女漫画で覚えた上目遣いというものをやってみる。
すると、主人の顔が少し和らいだ。

よし、機嫌直ったか!?
なんてこった、こんなに使えるなんて…
もっと早く知っておけば…

「そっか。じゃ、責任取ろっか?」
「え?」

「みゆ、連れてくね」
「ちょ、蓮!」
周りのクラスメイトにそう告げた主人は、私の手を引き、教室を出た。