恋と首輪




「うわあ、綺麗」

翌日。真っ先に来たのは海。

「ねえ蓮、見てる!?」
「ん、見てる」
「私じゃなくて海見て!」
「ワー、ウミキレイ」
私を後ろから抱きしめながら、見事な棒読みをかます。

「大体蓮が沖縄の海見たいって言ったんでしょ?!」「俺は海見てるみゆが見たかったの」
「…ッ…なにそれ」
主人の方に目をやると、何やらきょろきょろと辺りを見回していた。

「なに?どうかしました?」
「…いや、なんでもない」
なんだろう、私も見回してみるけど何もない。

知り合いでも見つけたのかな…

「あ、」
「ん?どうしたの?」
「…スイカジュース」
目に入ったのはスイカジュースと大きく書いてある屋台。
あ、あれテレビで見た、スイカが器になってるやつ…!

スイカに釘付けになっていると、主人はふ、と少し笑った。

「買ってくるから、日陰で待ってて」
主人は私の頭をくしゃと撫でて屋台に向かった。

「ふふ、」
初めてのスイカジュースに心が躍る。
言われた通り日陰で、主人を待っていると、私の前に人が止まった。

「おねーさん」
その声に顔を上げると、思わず固まる。

そこには、男の人が立っていた。
……超絶美形の。

いや、いやいや、なんだこの顔…。
普段から主人の彫刻フェイスを見慣れてるはずなのに…

この男の子は、主人とはまた違う美形で、王子様のような顔をしていた。
ほら、周りの女の子たちもみんなこの人を見てる。

「おーい、聞いてる?」
「え?」
「これ、お姉さんの?」
美男子の手には私のスマホがあった。

「あ、そうです!あれ、どこに…」
「あっちに落としてたよ」
「わ、ありがとうございます!」
「いーえ、気をつけてね。」
にこ、と笑った美男子に思わず見入ってしまった。

いけない、私には主人がいるのに…
てゆうかこの人まじで芸能人かなにかじゃないだろうか。

「てゆうか、お姉さん」
「…え、?」
美男子は、手を伸ばして私の顎に指を置く。
そして私の顔を覗きこむように屈んだ。

「すっげー可愛いね」

「……は?…」
突然の出来事に固まる私。

そんな時、横から手が出てきて、その美男子の腕を掴む。

「おい、お前何してんの…駿(しゅん)。」
「あ、蓮!久しぶり!」
……え?
知り合い?

駿と呼ばれた美男子は私から手を離して、主人に思い切り抱きついた。

…いや、え?

「ちょ、おま、やめろよ!ジュースこぼれるだろうが!」
「蓮!超会いたかった!最近全然こっち来てくれなかったからまじで寂しかったんだからな!」
美男子2人が抱き合う姿、なんて画になるんだ。
スイカを守りながらも力ずくで美男子を引き剥がす主人。

「……し、知り合い?」
「ああ、まあ、友達」
「なあ、この子が蓮の今のオキニ?可愛いじゃん!俺にも紹介してよ!」

くりくりの大きい目が私を捉える。
"今の"とゆう言葉に少し胸が痛くなった。

主人がモテてたのはわかってたけど…
そんな主人は明らかにどす黒いオーラを出して、私を隠すように前に立つ。

「彼女」
「は?蓮に彼女?…冗談?」
「まじだよ」
「え、あれだけ特定の女作らねえって言ってた蓮が?」
「もう違う」
「へえ、おもしろ」

「そうゆうことだから、俺のに触んな。」