恋と首輪


「ねえみゆさ、いつまで俺のこと様付けで呼ぶの?」
「え?ずっと…じゃだめなんですか?」
「いや、だめでしょ。どこの世界に彼氏のこと様付けで呼ぶ彼女がいるの?」
「じゃあなんて呼べば…」
「蓮」
「…無理です」
「いや、諦め早っ!」
いや、無理でしょ。
だって今までずっと様付けで呼びすぎて。
いきなり呼び捨てで呼ぶなんて、戸惑うってゆうか、恥ずかしいってゆうか。

まだ私にとっては蓮様イコール主人ってゆうか。
もんもんと考える私にグッと距離を詰める主人。

「俺、みゆに蓮って呼んで欲しいな~」
そして私の手を取ってゆっくり絡めていく。

「ほら、早く言わないとキスしちゃうよ」
「………なっ…」
「さん、にー、いち」
「……キス、の方が、いいです……」
「え、何それ可愛い」

「……んんっ、」
そして遠慮なくふってくるキスの嵐。

ああ、もう。
相変わらず主人のキスは、甘い。

「いや、待って違う。さっきの可愛い発言で呼び捨てなしにされるとこだった。」
「え?キスで全部なかったことになったんじゃないんですか?」
「ちげーし!俺絶対諦めないから。はい、言って?」
「…まあ、徐々に。慣れたら。」
「それ絶対言わねーやつじゃん。わかった、じゃあ俺みゆが呼び捨てで呼んでくれるまでしゃべんないから。」
「…は!?なんでそうなるんですか…!?」
「だってこうでもしないとみゆ、一生呼び捨てで呼んでくれなさそうだし」
「……もういい!蓮様のわからずや!」



「で、喧嘩した。」
「何ですかそれノロケですか?」
淡々とそう言う南雲。

「は!?どこが!?!れっきとした喧嘩でしょ!?」
「そんなことで、蓮様ともう2日もしゃべってないんですか?」
「…そ、そんなこと!?!言っとくけど、私にとってはすっごく大事なことなんだけど!」
南雲は面倒くさそうにはあ、と息を吐く。
ちょ、なにこの秘書。

「そもそもみゆ様はなんでそんなに蓮様を呼び捨てで呼びたくないんですか?」
「南雲はさ、蓮様のこと呼び捨てで呼べる?」
「え?僕は無理ですよ。秘書なんで。」
「それと一緒」

「いや、違うでしょ。関係性がまず。」
「……わかってる、もう首輪じゃないから様付けで呼ぶのはおかしいってゆうのはわかってるんだけど、…慣れてないし、面と向かったらなんか言えなくなって、」
「みゆ様って女の子みたいなことも言うんですね。」
みたいなってなんだ、みたいって。
立派な女の子なんですけど?

「あんたって結構言うよね。」
「でも、男の俺からしたら蓮様が可哀想です。」
「なんで?!」
「だって、様付けって相当距離置かれてる感じしますよ。首輪の時ならまだしも、付き合ってもそれって。俺だったら絶対嫌です。」

「………ッ……」
「みゆ様は、もし蓮様に距離置かれるようなことされたらどう思います?」
「………、いやだ」
「なら、答えは簡単じゃないですか。」

そっか。
今すぐ、…蓮に会いたい。