首輪を外される理由は一つ。
"主人を好きになること"
……私が主人を好きになったからだ。
それがいけなかったんだ。
主人が私を受け入れてくれたと思って、調子に乗ったからだ。
今からでも主人にもう好きにならないって言おう、
そしたらまた続けてくれるかもしれない。
かすかな期待をもって、まだ主人がいるかもしれない放送室に走る。
すれ違う人全員が私を見てるけど、そんなことどうでもよくなるぐらい
私の頭の中には、主人しかいなかった。
(バンッ)
勢いよく開いた扉の音にびっくりするように、こっちをみる主人。
「みゆ……」
主人の顔を見たら、余計涙が止まらなくなった。
私は主人のところに走る。
その勢いにバランスを崩した主人は、私と一緒にその場に座り込んだ。
主人の肩を両手で掴む。
「…ゔっ…蓮様……私のせいですか?」
「え?」
「……私が、…蓮様のこと、好きになったからですか?」
ああ、涙が止まらない。
目をまん丸にして私を見る主人。
「……ぐすっ、…だから、首輪外すなんてこと…
「ねえ、今なんて言った?」
「……え?…首輪外すなんて…」
「その前」
「…だから…私が、蓮様のこと好きだから……ッ…」
その瞬間、主人の手が私の頭を引き寄せた。
その勢いで、唇がくっつく。
「……ッ、んん、」
キス、してる。
私、今、主人と。
状況の把握ができないまま、されるがままに主人の唇を受け入れる。
優しいキスは、頭をもっとボーッとさせる。
「…はぁ、俺だけかと思ってた……」
顔が離れると、そう言って照れ臭そうに下を向く主人。
「……どうゆう、こと」
「ごめん、みゆには先に言っとけばよかったね」
まだ流れ続ける私の涙を拭いながら、なだめるように主人は言葉を続ける。
「俺が首輪制度もうやめるって言ったのは、みゆを首輪じゃなくて、彼女にしたいと思ったから、で…」
「……え?」
「だから俺から告るつもりだったのに、…見事に計画狂ったじゃん」
「……なにそれ……、ゔゔ……」
「ちょ、なんでまた泣くの!?」
自分でもわからない。
わからないけど、今すごく嬉しくて、胸がいっぱいで、安心してて、
すごく幸せだ。
「……告って、ください…」
「泣き止まない人には、言わない」
「……なぎやんだ……」
「ほんと?」
私が大きく頷くと同時に、主人の手が私の頭を撫でる。
ああ、好きだ。
この大きな手も、優しい目も、主人の、全部が。
「みゆ、好きだよ。俺の、彼女になってください」
"はい"とゆう返事の代わりに、
私は主人に唇を重ねた。

