"副社長が倒れた"
その言葉を聞いた瞬間に、頭が真っ白になった。
1ヶ月、主人は学校に来ず、連絡も途絶えていたから。
心配になって会社に行ってみるとこの騒ぎ。悪い予感は当たるもんだ。
私は、主人の新しい秘書さんに急いで連絡をとって
家で療養してるという主人の家に向かった。
切られてない以上、まだ私は"首輪"だから。
主人の部屋に入ると、血の気のない顔で寝ている主人の横にお医者さんがいた。
"過労"
秘書さんが言うに、主人はこの1ヶ月本当に休みなしで寝ずに働いていたらしい。
この言葉を聞くたびに、お母さんを思い出して平常心ではいられなくなる。
私のせいだ……
私が追い詰めたから……
その瞬間、主人の手が私の手を掴んだ。
「……行くな……行くな…」
荒い呼吸で、そう呟く主人。
どんな悪い夢を見たら、
ここまで苦しんで、涙まで流すんだろう。
私は主人の涙を拭いとる。
目を覚ました主人は、私の存在に気づいた瞬間、切長の目をまん丸にした。
「今日私来たの…、迷惑でしたか?」
「うん、迷惑だよ」
ごめんなさい。自分勝手で。
でも、私は今日来たことを後悔はしない。
私のせいで苦しむ主人を放ってはおけない。
私は、いつもより何倍も弱々しい主人を抱きしめた。
いつも主人が私にしていたように。
「……蓮様、…ごめんなさい…」
「……ッ…」
「少し、このままでいてください…」
その日私は初めて、主人の弱い姿を見た。
「……これは、みゆの本心なの?」
「…え、?」
主人は私の胸の中で弱弱しくそう言った。
「わからないんだ。今までのどのみゆが本当で、どれが偽りなのか。それとも、今までの全部が偽りなのか。」
「信じてもらえるかわかりませんが、本心でした全部。私が今まで蓮様にしてきた言動も。今、こうやって抱きしめてるのも。」
私は主人を抱きしめる腕に力を入れる。
「会いたかったです、蓮様」
この1か月、私の頭から主人が離れることは1秒たりともなかった。

