主人にもう顔も見たくない、そう言われた時
頭が真っ白になった。
当然だ。
酷いことをしたのは私なのに
騙したのは私なのに
主人を傷つけることはわかってたのに
絶望してるような主人の顔を見ると、涙が溢れてきた。
自分でもわからない。
この感情は何だろうか。
東雲蓮と婚約するため何年も準備をして、やっと婚約まで一歩近づけたのに。
私が望んだことなのに、
なんだろう。
……何も嬉しくない。
「なんでお前が泣くんだよ…」
ほんとだ。こんなの台本にはない。
こんな弱い姿を見せちゃだめなのに、
「…れん、様……ッ…」
人として最低だと思っていた主人の、優しさ、素直さを知るたびに、
私の心は、
確実に動いていた。
「…私、……蓮様のそばにいたいです…」
本心だった。

