"放課後、部屋に来て"
呼び出し用のスマホにメッセージが届く。
珍しいな。今まで、放課後呼び出されることはなかった。
主人は、仕事のはずなのに…。
そんな疑問を浮かべながらも、いつもの大きい扉を開ける。
「あ、みゆ来た?」
ニコッと笑う主人は、今日も変わらず美しい。
「今日はお仕事行かれないんですか?」
「行くよ、今から。」
「え?じゃあ私はなんで…」
「みゆも一緒に行くから。」
「…え?私もですか?」
なんで私が主人の仕事場に……
「蓮様、お車の用意出来ております」
南雲さんが丁寧に頭を下げる。
「おっけ、じゃあ行こっか」
そう言って主人は、私の手を引いて外へ向かう。
「とりあえず、ついて来ればわかるよ」
ニヤッと意味ありげに笑う主人の後ろをついて行き、止めてあったピカピカの高級外車に、乗り込んだ。
「…ここって、」
着いた先は、日本を代表する一流ホテルだった。
周りには、華やかなドレスを着た人達が大勢いる。
そこを通り過ぎる制服の主人と私は、完全に浮いている。
「今日ここでパーティーがあるんだ、西園寺財閥の令嬢の誕生日パーティー。」
「…パーティー、ですか?!」
急に言われたその言葉に、面食らう。
「うん、父さんの代わりに出なきゃいけなくなってさ」
「…え、あの私パーティーとか、出たことないですけど…」
「そんなこと知ってるよ。みゆは、ただ俺のそばにいてくれればいい。」
尚更わからない。
主人が、私をここに連れて来た意味が。
ホテルの奥の方へ入ると、主人はある部屋を、開けた。
「ここで、着替えてメイクとかやってもらってて、俺も準備してくる。」
「あ、はい、」
この子に、合わせてセットしてあげて、とそこにいたスタイリストさんらしき人に、声かけた主人は、私を残して、部屋を出た。
「すっぴんなのに、何でこんなに肌綺麗なの!?」
「あー、羨ましい!若いっていいわー!」
試着室のようなところで、渡された服に着替えた後、2人のお姉様方に、ヘアメイクをしてもらう。
今まで化粧をしてこなかった完成した私の姿は、まるで別人のようで。
本格的なプロのメイクって、すごい。
「うわー、すごく綺麗…」
「蓮様もきっと驚かれるわね」
そんなこと、普段言われないからお世辞でも嬉しい。
スタイリストさんに、お礼を言ったその時、部屋の扉が開いた。

