3月下旬、悠斗が東京に引っ越す数日前のことだった。
受験が終わり、卒業式も終えた悠斗は、慌ただしい引っ越し準備の合間を縫って、紗彩と会う約束をしていた。
駅前のカフェで合流した二人は、特に目的もなく街を歩き始めた。春の陽気がほんのりと残る午後、紗彩がふと立ち止まる。
「ねえ、悠斗。」
「ん?」
紗彩は少し微笑んで言った。
「受験が終わったら、一緒に行きたいところがあるって言ったでしょ?」
「ああ…そういえば言ってたな。でも、結局どこなのか聞けずじまいだった。」
紗彩はふわりと笑い、手で方向を示した。
「ここから少し歩くけど、付き合ってくれる?」
「もちろん。」
二人は街を抜け、住宅街を進み、やがて小さな丘のふもとにたどり着いた。
「ここ?」
悠斗が尋ねると、紗彩は頷いた。
「そう。上にちょっとした公園があるの。小さい頃からのお気に入りの場所でね。」
丘を登りきると、広がる空が見えた。小さな公園にはベンチがいくつかあり、その一つに紗彩が腰を下ろす。
「ここ、雪の日に来るとすごく綺麗なんだよ。木々に雪が積もって、真っ白な世界になるの。」
「へえ…そうなんだ。」
悠斗は周囲を見渡しながら、どこか感慨深げな表情を浮かべる。
紗彩が続けた。
「去年の初雪の日、悠斗と話してて思ったんだ。いつかここに一緒に来たいなって。」
「…それで、受験が終わったらって?」
紗彩は小さく頷き、笑みを浮かべた。
「ありがとう、紗彩。」
悠斗は言葉を選びながら続けた。
「ここに連れてきてもらえて、すごく嬉しい。…東京に行ったら、こうして気軽に会えなくなるのが寂しいけど。」
「私もだよ。でも、悠斗なら絶対頑張れるって信じてるから。」
紗彩の瞳がまっすぐに優斗を見つめる。
しばらくの沈黙の後、悠斗がふと空を見上げた。
「春だけど、なんとなく初雪の日のことを思い出すな。」
「そうだね。」
紗彩も同じように空を見上げ、二人は穏やかな時間を共有した。
丘を下りながら、悠斗は心に新たな決意を抱いていた。
受験が終わり、卒業式も終えた悠斗は、慌ただしい引っ越し準備の合間を縫って、紗彩と会う約束をしていた。
駅前のカフェで合流した二人は、特に目的もなく街を歩き始めた。春の陽気がほんのりと残る午後、紗彩がふと立ち止まる。
「ねえ、悠斗。」
「ん?」
紗彩は少し微笑んで言った。
「受験が終わったら、一緒に行きたいところがあるって言ったでしょ?」
「ああ…そういえば言ってたな。でも、結局どこなのか聞けずじまいだった。」
紗彩はふわりと笑い、手で方向を示した。
「ここから少し歩くけど、付き合ってくれる?」
「もちろん。」
二人は街を抜け、住宅街を進み、やがて小さな丘のふもとにたどり着いた。
「ここ?」
悠斗が尋ねると、紗彩は頷いた。
「そう。上にちょっとした公園があるの。小さい頃からのお気に入りの場所でね。」
丘を登りきると、広がる空が見えた。小さな公園にはベンチがいくつかあり、その一つに紗彩が腰を下ろす。
「ここ、雪の日に来るとすごく綺麗なんだよ。木々に雪が積もって、真っ白な世界になるの。」
「へえ…そうなんだ。」
悠斗は周囲を見渡しながら、どこか感慨深げな表情を浮かべる。
紗彩が続けた。
「去年の初雪の日、悠斗と話してて思ったんだ。いつかここに一緒に来たいなって。」
「…それで、受験が終わったらって?」
紗彩は小さく頷き、笑みを浮かべた。
「ありがとう、紗彩。」
悠斗は言葉を選びながら続けた。
「ここに連れてきてもらえて、すごく嬉しい。…東京に行ったら、こうして気軽に会えなくなるのが寂しいけど。」
「私もだよ。でも、悠斗なら絶対頑張れるって信じてるから。」
紗彩の瞳がまっすぐに優斗を見つめる。
しばらくの沈黙の後、悠斗がふと空を見上げた。
「春だけど、なんとなく初雪の日のことを思い出すな。」
「そうだね。」
紗彩も同じように空を見上げ、二人は穏やかな時間を共有した。
丘を下りながら、悠斗は心に新たな決意を抱いていた。



