合格発表の日、優斗は朝からそわそわと落ち着かなかった。
(大丈夫、大丈夫…。)
自分にそう言い聞かせながら、指定の時間になるとスマホを開き、大学のホームページにアクセスする。
「○○年度 入学試験合格者一覧」という文字が目に入り、手が震えるのを感じた。
画面をスクロールして、自分の受験番号を探す。だが、いくら目を凝らしても、その番号は見当たらなかった。

(…ダメだったか。)
胸にじんとした痛みを感じながら、悠斗はスマホを手に取り、紗彩に短いメッセージを送った。
「ダメだった。」
送信ボタンを押した瞬間、画面が明るく点滅した。着信だ。
「星乃紗彩」
名前を確認してから通話ボタンを押すと、すぐに紗彩の声が聞こえてきた。
「悠斗、大丈夫?」
その優しい声に、少し胸が締め付けられる。
「ああ…。でも、やっぱり悔しいな。」
「うん、そりゃ悔しいよね。でも、悠斗は本当に頑張ったよ。ここまでやり切れる人なんて、そんなにいないと思う。」
紗彩の言葉は、静かで穏やかだったが、確かな温かさがあった。

「ありがとう…。そう言ってもらえると、少し救われる気がする。」
「受験は結果が全てかもしれないけど、悠斗が頑張ってきたことは、絶対無駄にならないよ。」
「…そうだな。」悠斗は少しだけ笑みを浮かべた。

しばらくの沈黙の後、悠斗がぽつりと漏らした。
「東京行きは決まってるけど、やっぱりちょっと寂しいな。」
紗彩が少し驚いたように声を上げる。
「え、どうしたの?」
「いや、なんとなく。いろいろ考えちゃってさ。」
「そっか…。でも、悠斗なら絶対大丈夫だよ。新しい環境でも、絶対楽しいことがいっぱいあるはず。」
その言葉に、優斗は小さく頷いた。
「ありがとう。…東京で、絶対充実した大学生活にするよ。」
「うん、応援してる。」

電話を切った後、悠斗はもう一度深呼吸をした。
(そうだ、頑張ってきたことに悔いはない。東京で新しいスタートを切るんだ。)
そう自分に言い聞かせながら、スマホをそっとテーブルに置いた。