夏の日差しが校門前に降り注ぐ中、文化祭のセレモニーが進む。ブラスバンド部の選抜メンバーによる校歌の演奏が、朗々とした音色で来場者を迎えていた。
指揮者はいない。それでも、選抜メンバーは互いにアイコンタクトを取り合いながら、一音一音を丁寧に紡いでいく。
校門をくぐった来場者たちは足を止め、目の前で広がる音楽に耳を傾けていた。
演奏が終わると、受付テントから軽い拍手が起こり、それが徐々に広がっていった。
悠斗は一礼してトランペットを下ろす。
「撤収。次は多目的ホールだ。」錬が譜面台を片付けながら声をかける。
悠斗は頷き、楽器を慎重にケースにしまった。
午後の部の開始が近づき、多目的ホールの客席は次第に埋まりつつあった。
ステージでは、パーカッションが楽器のセッティングをしている。
悠斗は控室からそっと客席を覗き見て、前から3列目の中央に座る紗彩と美玖の姿を確認する。
(やっぱり目立つ場所に陣取ってるな…。見るたびに計画のことを思い出させられるよ。)
気を取り直し、トランペットケースを開けて準備を整える。
午後のステージは、ブラスバンド部の演奏から幕を開ける。部員たちは静かに舞台袖から現れ、それぞれの位置に着いた。
指揮台に立つのは顧問の田嶋一樹。その姿に、部員たちの背筋が自然と伸びる。
田嶋は客席を見渡し、一礼してから指揮台に上がった。そして、各パートリーダーとアイコンタクトを交わし、軽く頷く。その仕草だけで、ホール全体の空気が一気に引き締まる。
指揮棒が掲げられ、ホールが静寂に包まれる。そして、その棒が振り下ろされると同時に、音楽が解き放たれた。
「バラの謝肉祭」がホールを彩る。金管の力強いファンファーレに木管の繊細な音色が重なり合い、観客を壮大な音楽の世界へと誘う。
田嶋は、その指揮棒で、ダイナミックなテンポの変化や繊細なニュアンスを的確に引き出し、部員たちの音を一つにまとめ上げていく。
続いて演奏されたのは「アパラチアン序曲」。部員たちの集中はさらに高まり、指揮棒に合わせて練習の成果を存分に発揮した。悠斗もトランペットの音に情熱を込め、旋律を紡ぐ。
中盤、宮原結衣のフルートがソロを奏で始めると、観客を一瞬で引き込んだ。
クライマックスでは、金管と木管が一体となり、ホール全体に音楽が広がった。
演奏が終わると、観客席から大きな拍手が沸き起こった。
演奏を終えた部員たちは深く一礼し、ステージを後にする。アンコールはない。文化祭の伝統でもあるその締めくくり方に、悠斗はわずかな名残惜しさを感じた。
退場する際、悠斗はちらりと観客席に目をやる。紗彩が、こちらに視線を送っているのがわかった。
(計画どおりやってね、って顔だな。)
悠斗は、深く息を吸って気持ちを切り替えた。
指揮者はいない。それでも、選抜メンバーは互いにアイコンタクトを取り合いながら、一音一音を丁寧に紡いでいく。
校門をくぐった来場者たちは足を止め、目の前で広がる音楽に耳を傾けていた。
演奏が終わると、受付テントから軽い拍手が起こり、それが徐々に広がっていった。
悠斗は一礼してトランペットを下ろす。
「撤収。次は多目的ホールだ。」錬が譜面台を片付けながら声をかける。
悠斗は頷き、楽器を慎重にケースにしまった。
午後の部の開始が近づき、多目的ホールの客席は次第に埋まりつつあった。
ステージでは、パーカッションが楽器のセッティングをしている。
悠斗は控室からそっと客席を覗き見て、前から3列目の中央に座る紗彩と美玖の姿を確認する。
(やっぱり目立つ場所に陣取ってるな…。見るたびに計画のことを思い出させられるよ。)
気を取り直し、トランペットケースを開けて準備を整える。
午後のステージは、ブラスバンド部の演奏から幕を開ける。部員たちは静かに舞台袖から現れ、それぞれの位置に着いた。
指揮台に立つのは顧問の田嶋一樹。その姿に、部員たちの背筋が自然と伸びる。
田嶋は客席を見渡し、一礼してから指揮台に上がった。そして、各パートリーダーとアイコンタクトを交わし、軽く頷く。その仕草だけで、ホール全体の空気が一気に引き締まる。
指揮棒が掲げられ、ホールが静寂に包まれる。そして、その棒が振り下ろされると同時に、音楽が解き放たれた。
「バラの謝肉祭」がホールを彩る。金管の力強いファンファーレに木管の繊細な音色が重なり合い、観客を壮大な音楽の世界へと誘う。
田嶋は、その指揮棒で、ダイナミックなテンポの変化や繊細なニュアンスを的確に引き出し、部員たちの音を一つにまとめ上げていく。
続いて演奏されたのは「アパラチアン序曲」。部員たちの集中はさらに高まり、指揮棒に合わせて練習の成果を存分に発揮した。悠斗もトランペットの音に情熱を込め、旋律を紡ぐ。
中盤、宮原結衣のフルートがソロを奏で始めると、観客を一瞬で引き込んだ。
クライマックスでは、金管と木管が一体となり、ホール全体に音楽が広がった。
演奏が終わると、観客席から大きな拍手が沸き起こった。
演奏を終えた部員たちは深く一礼し、ステージを後にする。アンコールはない。文化祭の伝統でもあるその締めくくり方に、悠斗はわずかな名残惜しさを感じた。
退場する際、悠斗はちらりと観客席に目をやる。紗彩が、こちらに視線を送っているのがわかった。
(計画どおりやってね、って顔だな。)
悠斗は、深く息を吸って気持ちを切り替えた。



