本を読む事を諦め、階段を下りればすぐにギャーギャーと騒がしい声が聞こえてきた。
「世は常に弱肉強食なんだぜぃ。恨むなら獲物を前に手を出さねぇ、おめぇのヘタレ具合だろぃ!」
「僕はまったくもってこの争いに参加した覚えはないのだが、売られたからには買うしかあるまい!僕のことをポンコツと呼んだことを後悔するがいいよ!」
「うるせぇ黙れ!テメェら二人まとめて二度とトキノワの敷居を跨げねぇようにしてやるからな!」
なにやらよくわからない口論と、武器がぶつかり合うような金属音は、どうやらトキノワ前の道の真ん中から聞こえているようで
町民の悲鳴みたいなものも聞こえてくるけど…これ大丈夫なの?トキノワの評判に支障をきたすのでは?
心配になりながら玄関まで来たところで、腕を組み佇んでいるサダネさんを発見した
「サダネさん?どうしたんですか?」
「…この事態に、収拾をつけるべきなんですが、如何せん俺一人ではあの3人を止めることはできないので、どうしたものかと悩んでます」
うーん…。と悩むサダネさんをとても不憫に思いながら「ゲンナイさんは?」と聞くとサダネさんは頭を捻らせたまま「寝てますね」と答えた。
「由羅さんが遠征から帰ってくるまで、ゲンナイさんは寝てなかったので、顔をみたら安心したんだと思いますよ」
「…それは、申し訳ないというか…寝かせてあげたほうが、いいですね」
心配してくれていたのはナズナさんだけではないようだ。そういえばサダネさんにも、うっすらと隈がある…。なんだか照れくさくむずがゆい気持ちに、ほんのりと私の頬が色づいたその時ーー
ひときわ大きな金属音の後に悲鳴のようなものが聞こえてきて、いよいよどうにかしなくては、と。サダネさんと顔を見合わせる
ガララと玄関を開け放ったその先に道の真ん中で喧嘩をする三人が見える。
もはやボロボロで満身創痍になってる三人が尚も何かギャーギャーと喚きあっているのを遠巻きに見る町民達は、恐怖半分喧嘩見たさ半分、と見事に野次馬と化している。
覚悟を決めるようにサダネさんが息を吐き、武器らしき鉄の棒を構えた時だったーー
「えーーい!」
ードゴォォオオン!!
可愛らしい掛け声と共に何か巨大で重々しいものが落下してきて、私とサダネさんは驚愕する
「「「グェェ…」」」
空から降ってきたその巨大な岩は、暴れていた三人を見事に下敷きにしたようで、苦しそうな悲鳴を残し、ナズナさん達は仲良く三人気絶していた
何が起こったのか分からず呆然とする私の前に、スタッと岩の上から降りてきたのはナス子さんだった。
「全く~!夕飯の配達にきたら道の真ん中でどんぱちしてるんだもん!トキノワの評判が落ちて時成様に迷惑かけたらどうするのよ~!三馬鹿ぁ~!」
「な、ナス子さん一体どうやってあんな大きな岩動かして…?いや、というかあの三人死んじゃってませんか!?大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ~!」
「この三人はこのくらいで死なないからぁ~!」とナス子さんが笑顔を浮かべながらあの重そうな岩をひょいっと持ち上げていて私はぎょっとする。え、一体あの小柄な体のどこにそんな力が…
混乱する私の隣で武器をしまいながらサダネさんは平然とした様子で「ナス子さんは力持ちなんです」と説明した言葉に「はい?」と聞き返す
「トキノワ社員の特殊能力です。ナス子さんにかかればあの巨大な岩も軽石同然らしいです」
特殊能力じゃないです。魔法です、それもはや。って何度思えばいいんだ私は…。
なんだか頭痛がしてきた頭を押さえる。「お騒がせしましたぁ~」とナス子さんは町民に謝罪しながら、岩を元の場所に戻しに行ったらしく。
サダネさんが気絶している三人を引きずって医務室へ放り込んでいた
「ナス子さんがきてくれて助かりました」
ありがとうございます。と戻ってきたナス子さんに頭を下げるサダネさんに倣って私もお礼と共に頭を下げた
「お礼なんて由羅ちゃんと一緒に添い寝できるだけでいいよ~」
ぐへへ、と涎を垂らして見てきたナス子さんににビクッと反応すれば、視界を遮るようにサダネさんが私の前に乗り出した
「それは禁止と言ったはずですが?」
「ぶぅ。ケチ~!!でもなんであんなことになってたの~?」
夕ご飯をテーブルに広げながら聞いてきたナス子さんの問いに、サダネさんも「俺も良くは分かりません」と私を見てきた。
え、こちらを見られても私にもよく分からないんですが?
「まぁいいや!あの三人は当分起きないだろうし、先にご飯食べちゃお!」
ーーー
夕飯を食べ終えた頃だった。「お疲れ様」と気配なく突然現れた時成さんにナス子さんとサダネさんは椅子から立ち上がるとピシッと背筋を伸ばした。
「先程はなにやら騒がしかったようだね」
「も、申し訳ありません一重に私の監督不足が原因で…」
「私も、気付くのが遅くて…」
「うん。怒ってないから大丈夫だよ。責任があるとしたら、それはきっと由羅だからね」
「はい……?」
なんでですか。と納得いかない私は時成さんを睨むけど気にもされず…時成さんはそのままサダネさんとナス子さんになにやら指示を出し始めた
「一応、先の騒ぎの詫び文を町民に出しておくようにね」
「「はい!」」
「それとナス子。今からフダツの村に配達をひとつ頼むよ。」
「由羅をつれてね」という時成さんの言葉に「へ?」と面食らう。え、私もいくの?
「うへへぇ!いいんですかぁ~?やったぁ楽しい配達になりそぉ~!」
「ま、待ってください時成様!ナス子さんと二人でこんな夜更けに出かけるなんて、由羅さんが危険すぎます!」
「大丈夫だよサダネ。じゃあ後は任せたからね」
言うだけ言って去っていった時成さんを見送った後「ウヒョー!」と可愛らしい顔に似つかわしくない喜び方をしているナス子さんと、頭を抱えているサダネさん。という対照的な二人に挟まれながら、私は相変わらず自分本位な時成さんに小さくため息をはいた
言われたからには従いますが、何故私がナス子さんのお供なのか、理由を説明してほしかった。まぁ、言うだけ無駄か。説明不足なんていまさらだ
「フダツの村っていえばぁ温泉だよねぇ~ついでに泊まっちゃおっか由羅ちゃん?」
「いけません!一時間もあれば行って帰れる距離なんですから!寄り道せずに帰ってきてください!いいですかナス子さん!」
「ちぇ~!」
なんだかサダネさんがオカンに見えてきた。苦労してるなぁ…
「世は常に弱肉強食なんだぜぃ。恨むなら獲物を前に手を出さねぇ、おめぇのヘタレ具合だろぃ!」
「僕はまったくもってこの争いに参加した覚えはないのだが、売られたからには買うしかあるまい!僕のことをポンコツと呼んだことを後悔するがいいよ!」
「うるせぇ黙れ!テメェら二人まとめて二度とトキノワの敷居を跨げねぇようにしてやるからな!」
なにやらよくわからない口論と、武器がぶつかり合うような金属音は、どうやらトキノワ前の道の真ん中から聞こえているようで
町民の悲鳴みたいなものも聞こえてくるけど…これ大丈夫なの?トキノワの評判に支障をきたすのでは?
心配になりながら玄関まで来たところで、腕を組み佇んでいるサダネさんを発見した
「サダネさん?どうしたんですか?」
「…この事態に、収拾をつけるべきなんですが、如何せん俺一人ではあの3人を止めることはできないので、どうしたものかと悩んでます」
うーん…。と悩むサダネさんをとても不憫に思いながら「ゲンナイさんは?」と聞くとサダネさんは頭を捻らせたまま「寝てますね」と答えた。
「由羅さんが遠征から帰ってくるまで、ゲンナイさんは寝てなかったので、顔をみたら安心したんだと思いますよ」
「…それは、申し訳ないというか…寝かせてあげたほうが、いいですね」
心配してくれていたのはナズナさんだけではないようだ。そういえばサダネさんにも、うっすらと隈がある…。なんだか照れくさくむずがゆい気持ちに、ほんのりと私の頬が色づいたその時ーー
ひときわ大きな金属音の後に悲鳴のようなものが聞こえてきて、いよいよどうにかしなくては、と。サダネさんと顔を見合わせる
ガララと玄関を開け放ったその先に道の真ん中で喧嘩をする三人が見える。
もはやボロボロで満身創痍になってる三人が尚も何かギャーギャーと喚きあっているのを遠巻きに見る町民達は、恐怖半分喧嘩見たさ半分、と見事に野次馬と化している。
覚悟を決めるようにサダネさんが息を吐き、武器らしき鉄の棒を構えた時だったーー
「えーーい!」
ードゴォォオオン!!
可愛らしい掛け声と共に何か巨大で重々しいものが落下してきて、私とサダネさんは驚愕する
「「「グェェ…」」」
空から降ってきたその巨大な岩は、暴れていた三人を見事に下敷きにしたようで、苦しそうな悲鳴を残し、ナズナさん達は仲良く三人気絶していた
何が起こったのか分からず呆然とする私の前に、スタッと岩の上から降りてきたのはナス子さんだった。
「全く~!夕飯の配達にきたら道の真ん中でどんぱちしてるんだもん!トキノワの評判が落ちて時成様に迷惑かけたらどうするのよ~!三馬鹿ぁ~!」
「な、ナス子さん一体どうやってあんな大きな岩動かして…?いや、というかあの三人死んじゃってませんか!?大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ~!」
「この三人はこのくらいで死なないからぁ~!」とナス子さんが笑顔を浮かべながらあの重そうな岩をひょいっと持ち上げていて私はぎょっとする。え、一体あの小柄な体のどこにそんな力が…
混乱する私の隣で武器をしまいながらサダネさんは平然とした様子で「ナス子さんは力持ちなんです」と説明した言葉に「はい?」と聞き返す
「トキノワ社員の特殊能力です。ナス子さんにかかればあの巨大な岩も軽石同然らしいです」
特殊能力じゃないです。魔法です、それもはや。って何度思えばいいんだ私は…。
なんだか頭痛がしてきた頭を押さえる。「お騒がせしましたぁ~」とナス子さんは町民に謝罪しながら、岩を元の場所に戻しに行ったらしく。
サダネさんが気絶している三人を引きずって医務室へ放り込んでいた
「ナス子さんがきてくれて助かりました」
ありがとうございます。と戻ってきたナス子さんに頭を下げるサダネさんに倣って私もお礼と共に頭を下げた
「お礼なんて由羅ちゃんと一緒に添い寝できるだけでいいよ~」
ぐへへ、と涎を垂らして見てきたナス子さんににビクッと反応すれば、視界を遮るようにサダネさんが私の前に乗り出した
「それは禁止と言ったはずですが?」
「ぶぅ。ケチ~!!でもなんであんなことになってたの~?」
夕ご飯をテーブルに広げながら聞いてきたナス子さんの問いに、サダネさんも「俺も良くは分かりません」と私を見てきた。
え、こちらを見られても私にもよく分からないんですが?
「まぁいいや!あの三人は当分起きないだろうし、先にご飯食べちゃお!」
ーーー
夕飯を食べ終えた頃だった。「お疲れ様」と気配なく突然現れた時成さんにナス子さんとサダネさんは椅子から立ち上がるとピシッと背筋を伸ばした。
「先程はなにやら騒がしかったようだね」
「も、申し訳ありません一重に私の監督不足が原因で…」
「私も、気付くのが遅くて…」
「うん。怒ってないから大丈夫だよ。責任があるとしたら、それはきっと由羅だからね」
「はい……?」
なんでですか。と納得いかない私は時成さんを睨むけど気にもされず…時成さんはそのままサダネさんとナス子さんになにやら指示を出し始めた
「一応、先の騒ぎの詫び文を町民に出しておくようにね」
「「はい!」」
「それとナス子。今からフダツの村に配達をひとつ頼むよ。」
「由羅をつれてね」という時成さんの言葉に「へ?」と面食らう。え、私もいくの?
「うへへぇ!いいんですかぁ~?やったぁ楽しい配達になりそぉ~!」
「ま、待ってください時成様!ナス子さんと二人でこんな夜更けに出かけるなんて、由羅さんが危険すぎます!」
「大丈夫だよサダネ。じゃあ後は任せたからね」
言うだけ言って去っていった時成さんを見送った後「ウヒョー!」と可愛らしい顔に似つかわしくない喜び方をしているナス子さんと、頭を抱えているサダネさん。という対照的な二人に挟まれながら、私は相変わらず自分本位な時成さんに小さくため息をはいた
言われたからには従いますが、何故私がナス子さんのお供なのか、理由を説明してほしかった。まぁ、言うだけ無駄か。説明不足なんていまさらだ
「フダツの村っていえばぁ温泉だよねぇ~ついでに泊まっちゃおっか由羅ちゃん?」
「いけません!一時間もあれば行って帰れる距離なんですから!寄り道せずに帰ってきてください!いいですかナス子さん!」
「ちぇ~!」
なんだかサダネさんがオカンに見えてきた。苦労してるなぁ…
