幽霊鬼ごっこ

視線は鬼へと向いている。
うん。
大丈夫そうだ。

「止まってる間は両手を使って交互にドリブルすれば安定するから」

「わかった。ありがとう」
落ち着いてきたのか、さっきまでの焦りは消えている。

その時青鬼が一歩前に踏み出した。
ドスンッと大きな音がして地面が揺れる。

揺れに耐えながらドリブルを続けるのはなかなか難しい。
鬼が止まっている間に一気に横をすり抜けて逃げるしかない。

「おい鬼! こっちに来てみろよ!」

信一の挑発するような声に視線を向けると、ドリブルを繰り返しながら走っている。

鬼がちょこまかと動く信一に目を奪われた。
「由紀、行くよ!」

信一を捉えるために体の向きを変え始めた鬼の後を走り抜ける。