幽霊鬼ごっこ

油断していてはいけない。
体育館内に冷気が漂いはじめたとき、中央に幽霊が出現したのだ。

由紀が小さな悲鳴を上げて私の後に身を隠す。
「今日もみんなで鬼ごっこしようよ」

男の子が笑いながら言う。
その声は体育館内にも脳内にも反響して聞こえてきた。

思わず両耳を塞ぐけれど、声は聞こえ続けていた。
「青鬼さん出ておいで」

男の子が合図すると同時に二本の角が生えた青鬼が姿を表す。
それは直人のはずなのに、直人としての面影は残っていなかった。

「昨日の鬼が……!」
由紀が私の二の腕を強く掴む。

「大丈夫だよ由紀。絶対に逃げ切ろうね」
そう約束をして、そっと由紀の手を離した。

ふたりくっついたままじゃ逃げることは難しい。
由紀には自分で勇気を出してもらうしかなかった。