幽霊鬼ごっこ

男の子が赤鬼へ視線をむけて言った。
「由紀!」
赤鬼は名前を読んでも反応しない。

自分が由紀だという自我がないのかもしれない。
「お願い、由紀を返して!」

「もちろん。今回の鬼ごっこで誰かが鬼に捕まれば由紀は元に戻れるよ」
「由紀を取り戻すためには誰かが犠牲になるってことか」

信一が悔しそうに下唇を噛み締めた。
4人全員で無事に帰ることは許されないのか。

「さぁ、そろそろいいかな? 鬼ごっこスタート!」
男の子の合図と同時に赤鬼が一歩前へ動いた。

それだけで大きな波が立ち、私達は立っているだけでやっとの状態になる。
鬼は太ももから下しか水に入っていないから、動きも素早い。

「裕美、ふたてに別れて逃げるぞ!」