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帰り道。
中学の時は途中まで一緒に帰れる位置関係だったのに、高校になってから、学校がお互いの家のちょうど真ん中に位置するせいで八愛ちゃんとは一緒に帰れなくなった。
あぁ、寂しすぎる。
トボトボと効果音でも出てそうなくらいしょぼくれて歩く。
そんな私の視界に飛び込んで来たのは、少し前を歩く人の気だるそうな後ろ姿。
「……あ、」
落ち着いた茶髪にゆるくウェット感のあるパーマヘア、綺麗な白い肌。
後ろ姿じゃ目尻の泣きぼくろまでは確認できないけど、あれは間違いなく九條くんだ。
朝はいつもストーカーしてるけど、帰り道が一緒になるのは初めてで、小さくガッツポーズを決める。
朝同様、おそらく耳にはイヤホン。
いつもの何の歌を聴いてるんだろう。
さっきまでのトボトボ歩きが嘘みたいに、
もう少し、もう少し……と、
九条くんのそばに行きたい気持ちが、私の歩くスピードをどんどん上げていく。



