「……オリヴィア王女」
他に人がいなくなるまで、ゆったりとお茶を味わった後、キースが立ち上がり、じろりとこちらを見下ろしてくる。
「貴女は、ご自分がしたことの重大さを分かっておいでなのですか。身内だけならいざ知らず、無関係の民はおろか、ニール様さえ命の危険に晒した。これを、内密に済ませることができたのは奇跡です。ほんの少し前なら、我が国を攻める理由とされてもおかしくなかったのですよ」
「……ごめんなさい。でも」
自分のしたことを責められるのは構わないし、当然のことだ。
でも、ひとつだけ、キースの言葉には否定しておきたい箇所がある。
「でも、ではありません。まったく……いいですか。ニール様のお気持ちがどうあれ、破談になりでもすれば、どうするのです。貴女だって、それは本意ではないでしょう?ニール様にお会いすべく、脱走なんて真似をなさったのですから」
そう。
最初は、もちろんニールに会う為。
どうしても、一目でいいから会いたくて。
「ごめんなさい。でもね、私、後悔はしていないわ。とんでもないことをしたことは分かっているし、キャシディ様が寛大だから許してくださったのも。もしかしたら……周りの方は私を良く思っていらっしゃらないのだとしても。でも、やっぱりあのまま見過ごすなんて、私にはできないもの」



