聞き間違いだろうか。
思わずまじまじと見つめる頃には、ロイはこちらのことなどまるで見ておらず。
愛娘を抱きながら、器用に妻に手を伸ばしていた。
「……行こ、オーリー。おじいちゃんじゃないけど、疲れた体には良くないからさ、あれ」
「う、うん。そうね」
叔父にそう呼ばれるのは、いつぶりだろう。
気になったけれど、やはり王子様とお姫様のワンシーンは目が痛んで。
ライリーに引かれるまま、居間を後にした。
・・・
夜も更け。
雨が窓を叩く音がして、何だか寝つけない。
「トイレ?」
「ちょっとお水を頂こうかと思って。ごめんなさい、起こしちゃった」
こっそり布団を抜け出したと思っていたが、ビーを挟んでくっついて眠っているから起こしてしまった。
「ううん、起きてたんだ。でもな、この時間、緊急時以外部屋から出たくないんだよなあ。オーリーにも言っとく。僕は勧めないからね」
「どうして??うーん、でも、このままモゾモゾしてたら、ビーまで起こしちゃいそうだし。お水を飲んだら、すぐ戻ってくるわ」
(まさか、お化けが出る……んじゃないわよね、まさかね)
こんなに素敵なお家に、悪いものが出るとは思えない。
幽霊が出るなら、それはきっと優しい存在のはず。
会うことが叶わなかった人たちを想い、そっとドアを開けた。
「あーもう。何で分かんないかな……子供なんだから」
そんなライリーの声が届いていたら、部屋を出るのを思い止まっていたかもしれないけれども。



