「……そうですか。お辛い経験でしたな」
頬の傷よりも、目のずっと奥底を覗いて言われたようで、オリヴィアはゆっくりと首を振った。
「森まで行かなくても、本当は既に知っておくべきだったんです。それは城でも簡単に知れたことで……ただ、受け入れるのが難しかっただけ。私の弱さのせいで、あの場をいっそう悪化させた」
「知り、受け入れることは大切なことです。弱さを認め、他へ晒すことも。だが、それは年老いた者ですら、難しいと感じるものです。あまり、ご自分を責めるものではない」
ジェイダが淹れてくれたお茶から、湯気とともにいい香りが漂う。
懐かしそうに白い湯気を眺め、だが、カップを口元へ運ぶことはせずにデレクは続けた。
「弱さを見せるには、相手を信じなくてはできないのだから。自らの強さばかり誇示していては、いつか守れるものも守れなくなる。それが見せかけなら尚更です。その点、貴女は既にできている。信じているのでしょう、ここを、皆を。森を抜けた先にあるものを。ほんの少し遡れば、誰もできていなかったことだ。まずは誇りなさい、オーリー。その誇りがなくては、心が折れてしまう」



