「……このせいで、婚期が延びようとも?」
「……だとしたら、悲しいけど。でも、クルルとの未来が紡がれるのだとしたら、無駄ではないと思うの。何より、見て見ぬふりをするのなら、それは国とか王女とかそんなもの以前の問題よ」
無茶な真似をしたことは、いくらでも謝る。
そのせいで破談の声が上がるのなら、それも仕方ない。
でも、諦められないから。
人も、森も、もちろんニールのことだって諦めたくはない。
どれも、必死になって掴むだけだ。
だから、まずは目の前に手を伸ばした。ただ、それだけ。
「お父上はお怒りですよ。みっともない親子喧嘩を興じるようなことだけは、なさいませんように。これ以上、私に恥を掻かせないでください」
「それはお父様に……って、え……?」
ピラッと目前に広げられた紙。
あまりに近すぎて、少し離れて見てみるとそれは。
「ニール様は変わった好みをしていらっしゃる。よかったですね、王女。ああ、いや、可愛い店員さん。お茶をご馳走さまでした」
式典の招待状。
呆けたままのオーリーに見せつけるようにテーブルに置き、トントンとそれを叩いてみせる。
何から何まで嫌味な動作も、今は目に入らない。
それは確かに、オリヴィア王女へ宛てたニール成人を祝う式典への招待状だった。



