優しくしないで、好きって言って


「ひゃあ!」


 しっかり手を繋がれていることを忘れるなんて、バカみたいだ。

 思い切り手を引かれ、呆気なくソファに引き戻される。

 しかも私が倒れ込んだのは──というより、座り込んだのは、瑛大の膝の上で。


「なんで逃げんだよ」

「なんでって……そりゃ」


 まずい。普段は優しい瑛大の口調が変わったってことは、相当怒っているはず。

 焦ってただ狼狽えていると、するりと腰に腕が回された。


「七瀬……」


 甘く囁くように名前を呼ぶと、瑛大はグイッと私の腰を引き寄せ、もう片方の手でそっと左の頬に触れた。


 近い。近すぎて、どこを見ていいかわからない。

 身動きをとることもできず、私はただ無理やり視線を逸らす。


「目、見せてよ。ねえ」

「……いやよ」


 私だけドキドキしてるのがバレるなんて、絶対嫌。


「わかった。七瀬がそのつもりなら……」

「?」