優しくしないで、好きって言って


「違う?」

「……だって瑛大、すっごく上手かったんだもん」


 開き直った私は、唇を尖らせながらそう言った。

 手は未だ、繋がれたままだ。


「はは、それはどうも。……ただ、母さんにたまにやらされてるだけなんだけどね」

「巴さんに?」

「そ」


 ……なんだ、そういうこと。

 てっきり経験豊富な感じなのかと思ってたけど……。


「ふーん、モテモテなくせにね」

「関係ないよ。てことで──」

「?」


 急に落とされたそれに自然と目を動かせば、何か企んだような顔をした瑛大と視線がぶつかった。
 

「誤解も解けたわけだし……。もっと恋人らしいこと、しようか」

「……はい?」

「さっき言ったじゃん。七瀬は俺のお嫁さんになるんだって。……つまり、今は恋人、てことでしょ?」


 んんん? 仮にそうだとして、恋人らしいことってなに……!?

 一瞬にしてパニックに陥った私は、咄嗟にこの場から逃げ出そうと立ち上が──。