優しくしないで、好きって言って


「いってらっしゃい、七瀬さん」

「いってきます」


 そう言って一歩歩き出したその瞬間、ハーフアップに束ねた長い髪がふわりと風にさらわれた。



***



「七瀬ちゃんて、ハーフ?」


 響いたのは、明るさを(まと)った低い声だった。

 気づけば輝きに満ちた眼差しが幾つか、私を見つめている。


「この子、クォーターなの」

「「へー!」」


 ポン、と私の肩を叩きながら答えたセミロングの少女の言葉に、目の前の瞳がより一層輝きを増すのが見えた。

 けれど私はそんな様子を気にすることもなく、冷たいアップルジュースを口へ運ぶ。


 ……おいし。


 何の気なしにストローを回すと、カランとグラスが音を立てた。