優しくしないで、好きって言って


 こうやって男の子に髪を触られるなんて、今までになかったんだもの。

 そりゃあ慣れないことだし、私だって緊張しちゃう。


「髪、伸ばしてんの?」

「ん?」


 瑛大が何かを言ったのはわかったけど、ドライヤーの音が大きいせいで上手く言葉が聞き取れなかった。

 いや、このうるさい音はドライヤーだけのものなんだろうか……。


 そうして黙ったまま身を任せていて、気づいた。

 手つきが優しいというか、どこか手慣れてるというか。

 妙に、乾かすのが上手いということに。


「……こういうの、他の子にもしてるのかな」

「ん?」

「へ? や、あの……」


 私ったらなにやってんの。

 思ったことそのまま口に出しちゃったし、しかも今弱風になってるじゃない。

 聞こえてたらもう、最悪すぎる。


「なんでもない」


 私は消え入りそうな声で答え、俯く。

 すると、くすくすと笑いを押し殺したような声が背後から聞こえてきた。