優しくしないで、好きって言って


 いきなり覗き込んできた瞳に、私は取り繕うように笑顔を向けた。

 もしや疑念の眼差しを向けていたことがバレた? そう思い、内心冷や汗をかいていると、


「七瀬も緊張してる?」


 その口から落とされたのは、予期せぬ言葉で。


「改めて結婚とか、なんか照れんね」


 甘く響いた声に、胸がきゅっと締め付けられる。


「……べ別に、私は」

「そう? なら俺だけか」


 もう、ほんと意味わからない。

 絶対そんなこと思ってもないくせに。


 ……変にドキドキなんて、させないでよ。


 心の中で呟いたその時、「あ」と思いついたような声がした。


「あれ、お土産のいちごタルト」


 その人は、冷蔵庫の方を指さしニイッと私に笑いかけた。


「七瀬、好きだっただろ?」

「……っ」


 ずるい。


「うん、ありがとう」


 ……これは、素直に嬉しいやつだ。