「ふふっ、ママがお料理しちゃおかしい?」 「おかしくはない、けど」 実際ママは料理上手だ。 だけどその腕前は、特別な時じゃないと発揮されないもの。 だから、もしかして──。 「ねえ、今日ってなにかの日だったりする?」 「さっすが七瀬ちゃん、鋭い! 実はね……」 ──ピーンポーン。 「あっ、来た来た!」 ……キタ? 「七瀬ちゃん、ちょっと待っててね」 「えっ、ママ!?」 嘘でしょ? 正解を言うより先に、ママは腰まで届く長い髪を揺らしながらパタパタと上機嫌で玄関へ向かっていってしまった。