優しくしないで、好きって言って


「ただいまー」


 車を降りた私は明るく声を飛ばしながら家の中に入る。

 今日は家にママがいる。在宅勤務だから、会社に行かずに家でお仕事をしているんだ。


 そうして廊下を進んでいると、ふわりといい香りが漂ってきた。

 夕飯の準備でもしているのかな?

 なんとなくそんなふうに考えながらリビングに入ると。


「あらー、七瀬ちゃんおかえりなさい」

「ママ、ただいま……って! なっ、なんでママが料理なんて」


 驚いた。

 フライ返しを片手にフリルのついた純白のエプロンをつけたママがいたんだから。

 いつもはお手伝いさんが作ってくれるか、竜胆が作ってくれるのがほとんどなのに。