優しくしないで、好きって言って


「……親同士が勝手に決めたのよ。だから、自分たちの意思じゃなくて」

「やっぱり本当なんだ!」

「「綾城くぅーーん」」


 ……はは、全然聞いてない。


「こうなったら、いろいろと話してもらうからね!」

「だ、だから──」

「みんな!」


 柔らか且つ凛とした声が一瞬にして全員の意識を掻っ攫った。

 振り返ると目に映ったのは、教壇に立ち、教卓に両手をつき前のめりになる、黒髪セミロングの少女。


「一旦落ち着きましょう」


 私の親友、織山実玖留がたおやかな口調で声を響かせた。

 まるで聖母のようなオーラを放つ彼女の言葉に、先程まで騒いでいたのが嘘みたいにみんなが耳を傾けている。


 逃げ場を失った私にも漸く助け舟がやってきた──。


「ここは私に任せて。私が代表して七瀬からたーっぷり話を聞くから」


 なんてことは、どうやらなかったようだ。