優しくしないで、好きって言って


 艶やかなジュエリーとリボンをあしらった、オシャレな髪飾り。

 見覚えのないそれを手に、たどり着いたのは。


「あの時……」


 それしかない。

 急に抱きしめるなんて、おかしいと思ったのよ。


「……瑛大のやつ、普通に渡してくれたらいいのに」


 私はそっと、それを手のひらに握りしめた。

 美しいボルドー──私の、昔から変わらない、好きな色。


 ……偶然?

 それとも、覚えてくれて──?


「ああ!」


 と突然、ぼんやりとする脳内を切り裂くようにそんな声が響いた。

 何ともわざとらしい、大発明でもしたような声。

 発信源は言わずもがな、竜胆だ。