優しくしないで、好きって言って


『なら、俺のこと好きにさせればいいってことね』


 あんなこと言ってたし……きっと私のことを本気で落とすつもりでいるんだろう。

 ……どんな手を使ってくるかは、わからないけど。


 あーーーっ! と思わず発狂したくなった私の目の前で、竜胆がスッと頭を下げた。


「ご婚約おめでとうございます」

「……聞いたの?」

「ええまあ」


 もう竜胆にまで伝わっていたとは。

 唐突に知った事実に少し驚いたけれど、すぐにそれもそうかと考え直した。

 パパとママったら、相当はしゃいでたもんなあ。


 今頃〝娘に婚約者ができた〟とスキップしながら話し回っている姿が容易に想像できる。

 私だって、二人が喜んでくれるのはもちろん嬉しい。寧ろ、喜んでほしいんだけどね……。

 はは、と無意識にも声を()らしたその時。


「あれ、お嬢様それ……?」

「ん?」

「綺麗な髪飾りですね。そんなのつけてました?」

「え……?」


 指摘され、(うなが)されるように手を頭にやる。


「……なに、これ」