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───コンコンコン。
「はーい」
軽やかに鳴ったノック音にすぐ返事をする。
「失礼いたします」
「……竜胆」
瑛大と巴さん──あ、本人にそう呼んでくれと頼まれたんだけど、その二人を見送ったあとのこと。
ドレスを着替えもせず、自室の椅子に一人ぼんやりと座っていると、パーティーの後片付けを終わらせたらしい竜胆が部屋に入ってきた。
「……ん? お疲れのようですね」
「まあね」
あのあと部屋から出ると、瑛大が何を言ったのか賛成の形で話がまとまったということになっていて、一斉に祝福ムードに包まれることとなった私。
そんな中、まさか言えると思う?
私はまだ認めてないだなんてそんなことをさ。
どうやら私は、瑛大の心に火をつけてしまったらしい。
こんなにも強引な先手を打たれるとは、考えてもいなかった。



