「ちょっ、なななんで竜胆が……!」
どうしよう、今私思いっきり〝名前〟叫んだよね!?
そんな事実にパニックに陥っていると、目の前で微笑んでいた竜胆が「うーん」と唸りながら顎に手を当てた。
「なんでと言われましても……お嬢様をちゃんと起こすよう、奥様に頼まれましたので」
うっ。
たしかに竜胆は、数年前からこの家に住み込みで働いている、正真正銘私の〝お世話係〟。
責務を全うするのは、当然のことだろうけど。
「だ、だからって、女の子の部屋に勝手に入らないでよ」
驚いたままの心臓で小さく抗議の声を上げる。
そして寝癖のついた髪と顔を隠すべく、慌てて真っ白な布団を深く被った時だった。
「ご安心を。23の男が7つも歳下の……しかも高校生相手に寝込みを襲うような真似は致しませんので」
はぁ!?
サラリと放たれたそれに、一瞬言葉を失った。



