優しくしないで、好きって言って


「なんでそんな大事なことを勝手に……」


 呆れてものが言えない。

 それってつまり、許婚(いいなずけ)ってことよね?


 深くため息をつきママを見ると、その目がニタリと三日月形に歪んだ。

 そんな表情を前に嫌な予感が募る中、ママが耳元に顔を寄せてきて。


「もう七瀬ちゃんったら、恥ずかしがらなくていいのよ? 瑛大くんのこと、好きだったくせに」

「!?」

「ママが知らないとでも思ってた〜あ?」

「ちっ、違っ……!」


 もう、ママったらなんてことを言うのよ!

 くすくすと楽しそうに響く声は、天使のものか悪魔のものか。

 この会話がもし聞こえてたらどうするの、と私は慌てて辺りを見回し、ひとまず聞こえてはなさそうな様子にホッと胸を撫で下ろした。



「で、どうなの七瀬ちゃん。素敵なお話でしょう?」