「ねぇ、ママ。そろそろ訊いてもいい?」
自己紹介もひとまず終わったところだし、と私は動揺を無理やり掻き消し本題を切り出した。
「〝婚約者〟ってどういうこと?」
聞き間違いじゃなければ、そう言ったよね?
そう、前のめりになって訊ねると、すぐにその艶やかな唇の端がきゅっと上がった。
「いやー、それがね。ママ、少し前にアメリカに出張してたでしょう? その時、久々に交流会に参加したんだけど……」
交流会──世界の大企業のトップ同士が親睦を深め、より経済を発展させよう! という名目で、定期的に開催されているパーティーのことだ。
そこでたまたまママは瑛大ママに出会い……世間話をしているうちに意気投合。
訊いてみれば娘・息子にはお互い特定の縁談相手もいないということで。
「それはそれは盛り上がっちゃって〜」
「「ねーっ!」」
「……」
トントン拍子で決まったらしい。
私と、瑛大の結婚が。



