優しくしないで、好きって言って


「新条七瀬です」


 一度姿勢を正した私は、はっきりとした口調でそう言い軽く会釈した。


「瑛大の母の綾城(ともえ)です。お誕生日おめでとう、七瀬ちゃん」

「ありがとうございます……!」


 向けられた柔らかな笑みに頭を下げる。

 笑った顔が瑛大と似てるなーなんて思いながら頭を戻すと、


「綾城瑛大です」


 どくん、と胸が大きく鳴った。

 意識してなかったけど、スーツ着てるし、髪型だってこの前よりしっかりと整えられてるし……。


「誕生日おめでとう、七瀬」


 ……っ!


「あ、ありがとう」


 不意打ちで食らった言葉の破壊力に、不覚にも狼狽えてしまった。

 あーもう私ったら何いちいち変に反応してるんだろう。今はそれどころじゃないんだってば。