優しくしないで、好きって言って


「ごめんなさいね。本当は主人も連れてきたかったんだけど、どうしても仕事を抜けられなくって」

「いえいえ、いいのよ〜。お忙しいですものねえ」


 ぽかんと呆ける私を置いて、目の前で繰り広げられるママと瑛大ママの会話。

 その時ふと、〝父親はあまり家に帰ってこないんだ〟って昔瑛大が言っていたのを思い出した。


 瑛大のパパは凄腕の医師で、その上国内屈指の大病院〝綾城病院〟の経営にも携わっているすごい人だって、聞いたことがある。

 そりゃ、多忙を極めるのも納得だ。

 因みに瑛大のママも、医師のお仕事をしているらしい。


 ……というか。


「あのー」


 そろそろ説明してほしいのですが。そう思った私は意を決し、そろりと声をかけた。

 すると。


「そうだ七瀬ちゃん、ちゃんとごあいさつしなきゃね」


 パンッと手を叩いたママが、茶色く染めた長い巻き髪を軽やかに弾ませた。

 そんなママに「あなた」と促されたパパは、「こほん」と一つ咳払いして。